18 USED買い付けの視点

実に2か月ぶりの日記・・・・すみません、バタバタしていて。さて、今日は来週の京都造形芸術大学の授業で骨董市に買い付けに行くのですが、その「視点」について書いてみたいと思います。僕が中古市場でどんな視点で買い付けをしているか、その基準のお話です。

まず最初にD&DEPARTMENTの視点、シャレやウィットがあることです。これが結局、一番難しいのですが、ここが無いとただの中古になります。dの店に並べられると、あれもこんなに面白い生活道具になる。もちろん、ここが行き過ぎると格好悪いことになります。これはもう「センス」でしか無いのと、ブランド認識してもらっているとするなら、この選定の絶妙な視点だと思います。他のリサイクル店では見向きもされなかったものが、dで売られると飛ぶように売れる。そういうことを目指しています。なので、常に「これは、あの人が、こんな風に使ってくれるかも・・・」と想像して買い付けます。「面白いけれど、何に使うかわからない」というものは、買い付けません。ここはよく陥りがちです。「面白そうで、何かに使えそうなもの」というのは、結構ありますが、それを実際に共感させ、実際に売れるか、と考えると、やはり「d的視点と提案」が最終的な説得力となります。
うちの店に来て、なんか、面白いなぁ、他の中古屋さんと違うな、と感じたならば、そこなのです。

次に明らかに壊れているものは買い付けません。少しだけ何かをすれば売れそうなものは別ですが、ここはぐっといつもこらえています。直せばなんとかなると思っても、「では、誰がいつ、直すか」と考えてください。これは過去に何度も僕もうちのスタッフも陥りました。なので例えば、ガラスのコップが少し欠けていることをわずかな時間で見つけなければなりませんし、椅子などは、必ず腰掛けたりして確かめます。量があるものでも一つ一つ確認して、壊れているものは、勇気を持って弾きます。結局、割れたグラスはどんなに可愛くても売れないのです。これは店によって考え方は違うでしょう。dとしてはそう考えています。

次はアンティーク、レトロ、ビンテージ、50’s、キャラクターものは買いません。これは簡単に言うと「すでにマーケットが確立されていて、価値基準が設定されているもの」を買わないということです。これは専門店がたくさんあり、そっちに任せましょう。dがやることではないと考えています。骨董市でdらしいものを買い付けるのは、ある意味、無謀でしょう。笑「骨董」なのですから、マーケットが確立されています。何を手に取っても「骨董」なのです。しかし、たまに「ガラクタ」があります。それこそ、その中にd的なシャレを見出して、買いましょう。

これはマナーの話です。まず、いきなり値切るのは失礼です。安くしてもらう買い物の楽しさはありますが、そこに関係性がないのに、ただ負けてもらうのは、僕は違うと考えます。店の仕入れでも、何度も通い、関係性ができ始めたら、交渉する。定期的にその店にはちゃんと顔を出したり、通う。その関係性を意識しましょう。そして、手に取ったものは、ちゃんと元の位置に戻しましょう。中古屋さんや、市に出店している人は、そういうことはよく覚えているものです。関係性ができるまで、勝手に取り出すのもやめたほうがいいです。必ず「あれを見たいので、取り出してもいいですか?」など、声をかけましょう。中には触っただけて怒り出すリサイクル店があります。要注意を。もちろん、挨拶も大切。

次に価格です。よさそうなものがあれば、まず、dの店頭で売りたいあなたの値段を目利きしましょう。そして、少なくとも3倍以上で売れそうな価格を付けられそうなら、少し考えましょう。僕はいつも5倍から10倍をつけるようにしています。なんて横暴な、と思われるかもしれませんが、僕らは魚群探知機のない船で遠洋漁業をしているようなもの。どこにあるかわからないお宝を、勘だけを頼りに探す。そこにはかなりの費用が実はかかっています。とはいえ、最終的には「店頭価格」です。「なんて高いんだ!!」となるようなら、ご縁がなかったものと諦めましょう。
僕はよく、まず値段を当てるようにしています。単純に楽しいのと、見ずに値段がわかるように訓練のつもりです。と、いうのは、リサイクル屋さんの中には、値段を見る前に「値段をこちらから言う」ということがあります。「これ、いくらなら買う?」と聞かれて、「それ、いくらですが?」というのは格好悪い。なので、日々、訓練です。ちなみに、関係性ができはじめたら、「これいくらですか?」と聞くより「これ、500円にしてくれませんか?」としたほうが格好いいです。「相場がわかる」というのは、格好のいいこと。これは訓練したら誰でも出来るようになります。

最後に偽物と本物です。これも見て経験するしかありません。難しいのは、無名の偽物です。無名と言ってもその世界では有名なのですが、例えば、柳宗理がデザインしたガラスの杯があります。そして、この偽物は大量に出回っています。森正洋さんのG型醤油差しも、たくさんの偽物が存在しています。一番まずいのは、dで取り扱っている商品の偽物を買って、店頭に並べてしまうこと。世の中すべての偽物を見分けるのは難しいですが、少なくともdで取り扱っているものの偽物は、勉強しておきましょう。


創業メンバーである斎藤善与とよくリサイクル屋やガラクタ屋に行くと、その仕入れのことを「救出する」と言いました。ここでいう「救出」とは、再び、拾い出し、世の中へ「価格」をつけて価値を再提示し、買われて誰かの家で大切に使われることを言っていました。面白いからなんとなく買ってもらえるのではなく、多少、ブサイクでもしっかりその人の生活の中に溶け込み、特別な扱いは受けなくとも、ちゃんと毎日使ってもらえるようにする。dの中古とは、そんな一面もあり、だからこそ、買い取るところから、価値の再提示ができないとまた、捨てられるのです。dのシールを貼って販売するのは、新品のセレクト品やトラベル誌、ヒカリエのミュージアムや食堂、ダイニングの食へのこだわりなどと、同等という意味です。だからこそ、dとしての独自な価値観、目利きにこだわっていかなければ、新しい価値の創造はできないと考え、一つ一つのコップや椅子を仕入れています。