富山の風景の中にある桂樹舎の和紙(富山市編)

現在富山店で開催中の富山の街と桂樹舎の和紙
富山では、老舗の蕎麦屋や寿司屋、レストランなど様々な場所で、桂樹舎の製品が長く使い続けられ、富山に根付いていることが伺えます。今回は、富山の風景の中にある桂樹舎の和紙を通して、その魅力をご紹介します。
今回は富山市にある3軒のお店に取材に行ってきました。


■美喜鮨

D&DEPARTMENT TOYAMAから歩いてすぐのところにある「美喜鮨」。私たちのお店から目と鼻の先のところにも、桂樹舎の製品を愛用されているお店がありました。美喜鮨は、昭和25年創業。東京で寿司屋をやっていた先々代が、戦争を機に出身地であった富山に戻りお店を開いたのが始まりだそう。現在の店主・3代目の横嶋幹雄さんにお話を伺ってきました。

お店から近いところにある美喜鮨は、何度も目の前を通ったことはあるものの、お店に入るのは初めて。やはりカウンターのあるお寿司屋さんに入るのは少し緊張します。入ってみると、店内は隅々まで整えられており新築のようにきれい。お話を聞くと、10年前にリニューアルされたそうです。

お店のリニューアルにあたり、「富山のものを取り入れたお店にしたい」と考えられた横嶋さん。器や柱、ガラスの装飾等、店内の様々な部分に富山のものづくりが活かされています。桂樹舎との出会いも、リニューアルに向けて、お店のアイデアを考えていた時だったそう。建築士の方に紹介されて桂樹舎を訪れた横嶋さんは、一目みて、面白いと思い、お店に取り入れることを決めたそうです。

まず目が止まったのが、カウンターの座席。おなじみの角座が使われていました。

定番の角座のようですが、この角座、カウンター席の幅に合うよう特注のサイズになっています。5年以上使っているそうですが、使い込まれた風合いはあるものの、傷みはほとんどありません。(こちらの角座、1枚お借りしましたので、店頭で実物をご覧頂けます!)

そして、こちらの椅子にも桂樹舎の和紙が。こちらの椅子は、和紙だけ仕入れ、横嶋さんご自身が椅子に貼っているいるそう。

他にもまだまだありました。こちらの暖簾は、リニューアルの際に特注したものだそうで、10年もの。横嶋さんご自身が桂樹舎に出向かれ、たくさんの色のサンプルの中から選んで作ってもらったのだそうです。お客様が日々触れるものだと思いますが、汚れも破れているところもなくとても綺麗です。むしろ、日々触れられているからか、柔らかく布とは違った独特の風合いが出てます。

横嶋さんに桂樹舎の魅力を伺うと、「思っていたより丈夫だし、何よりお客様が驚いてくれる」とのこと。美喜鮨には、県外からのお客様も多く訪れるそうで、会話の中で桂樹舎のお話をすると「和紙には見えない!」と言われるそう。
確かに、紙は、弱くてもろいイメージなので、暖簾や角座など耐久性が求められるものに紙が使われていること自体、初めて知る方にとっては新鮮のはず。さらに、5年、10年と使い込まれた和紙は、柔らかく革に似た手触りに変化しているので、「本当に紙?」と思われるのも良く分かります。
私自身、桂樹舎のブックカバーを3年以上愛用していますが、それでも、美喜鮨の暖簾が10年ものと聞いて、その綺麗さに本当に驚きました。

取材の後には「富山湾鮨」をいただきました。富山の旬の魚が10貫。醤油だけでなく、塩や炙りなど飽きさせない工夫があり至福の時間でした。

お寿司屋さんと聞くと、知らない店に1人で入るのはなかなか敷居が高いですが、実際に美喜鮨を訪れると、カジュアルさとはまた違った親しみやすさがありました。
お店全体で富山の魅力を伝えてくれる「美喜鮨」。ぜひ一度、訪れてみて下さい。

D&DEPARTMENT TOYAMA 進藤

○美喜鮨本店
富山市桜町1-7-5
tel:076-432-7201
営業時間:11:30~14:00、17:00~22:30(材料がなくなり次第終了)
定休日:水曜日


■神通町 たむら

富山駅から徒歩10分、市街地の喧噪を離れた神通川のほど近くに「神通町 たむら」はあります。店主の奥様、田村さんにお話を伺いました。


元々はコース料理を提供していたというこちらのお店。6年前より蕎麦店にシフトされました。富山の他にも、福井や阿蘇、北海道のこだわりの十割蕎麦がいただけます。十割蕎麦の味わいを楽しむために、店主の田村さんからは「まずはそのまま食べてみて」とおすすめいただきました。

この日いただいた富山の十割蕎麦。しっかりした甘味を感じることができ、驚きました。

「富山の素材を使って何かを作ることって、案外皆見過ごしていると思うんです」と田村さんは言います。桂樹舎のメニュー表にする前も、富山にこだわり富山市八尾町の作家さんにお願いしていたそうです。これは以前使っていたメニュー表。ダンボールに柿渋を塗って仕上げてあります。

元々芹沢銈介さんがお好きで、桂樹舎の雰囲気が好きだという田村さん。3年前から桂樹舎のメニュー表を使っています。メニュー表は毎日手に触れるもの。破れてしまった角の部分は自分達で手入れしながら大切に使われていました。色は店内の雰囲気に合わせ、落ち着いたものを選んだそう。サイズも桂樹舎に相談しながら決め、完全オリジナルのメニュー表を作りました。

こちらは待ち合いスペースの一角にあった、ウェイティングシート。目隠しにさり気なく桂樹舎のもみ紙が使われていました。さっと名前を書いてしまいそうですが、丁寧な設えのせいか、綺麗な字で書きたくなります。

お店に行った際には、蕎麦だけでなく、メニュー表やウェイティングシートにも注目してみてください。

D&DEPARTMENT TOYAMA 上野

神通町 田村
富山市神通町2-1-3
tel:076-432-1505
営業時間:ランチ11:00~14:30(LO.14:00)、ディナー17:00~20:30(LO.19:30)
定休日:毎月10日、20日、30日、月曜日の夜


■新とんかつ 太郎丸店

富山駅から車で20分程のところにある「新とんかつ 太郎丸店」。広々とした店内の至る所に芸術家の作品が置いてあり、まるで美術館のようなとんかつ屋さんです。民藝がお好きだという店主の室田さんにお話を伺いました。

クラシックが流れる店内には室田さんが選んだ美術品の数々が飾ってあります。

人気のミックス定食。写真は2/3の量ですが、それでも十分な食べごたえです。さくさく衣の肉厚なヒレかつとぷりぷりのエビがたまりません。

新とんかつでは、40~50年前に先代の吉田桂介氏に作ってもらったという、おしながきを使用しています。おしながきを作るにあたり何かリクエストはしたのか尋ねると、室田さんは笑いながら「おまかせ、好きにしてって。でも大胆にしてほしいとだけ伝えたよ」と答えてくれました。何回か新しいものに作り替えてはいますが、補強しながら大切に使っているそう。

「補強して使うことによっていい味がでている」と室田さん。

待ち合い席には和紙クッションもありました。シックな椅子に大胆な柄のクッションが映えます。白色のクッションは20~30年使い込んだもので、それ以外は最近使い始めたそう。

20~30年使っても、目立った汚れはほとんどありません。

オープン時にしっかりと強度のある和紙のおしながきを作りたいと思っていた室田さんは、知人の紹介で桂介氏と知り合ったそう。「おしながきなんかどうでもよくなるほど、桂介さんに惹き付けられて、毎週のように遊びにいったよ」と室田さんは言います。桂介氏について尋ねると、「構えがなく、とっても可愛い人だった。周りの空気を温かくするような。それに芸術に造詣が深くて、聞いたら全部教えてくれる、先輩のような人だったね」と室田さん。桂介氏の話をする室田さんは楽しそうで、桂介氏のことを非常に慕っていたことが伝わってきました。

店主の室田さん。

きっと、美術館のような店内には、桂介氏から影響を受けた民藝や芸術の感性が表れているのではないでしょうか。芸術に触れながらとんかつを食べる体験は非常に新鮮でした。是非行って、体感してみてください。

D&DEPARTMENT TOYAMA 水戸

○新とんかつ 太郎丸店
富山市太郎丸西町2丁目11-5
tel:076-424-5785
営業時間:ランチ11:00~15:00(LO.14:30)、ディナー17:00~21:00(LO.20:30)
定休日:火曜日


今回は富山市の3軒のお店をご紹介しましたが、他にもたくさんのお店で、桂樹舎の和紙製品が使われています。
地元富山で愛される桂樹舎の和紙。是非みなさんも使ってみてください。