『d design travel OKAYAMA』ちょっと長めの編集長後記

ちょっと長めの、編集長後記

裏表のない、〝晴れの国〟の 豊かな暮らし。

「岡山号」は、制作費の一部を、本書初のクラウドファンディングを利用した資金集めから始まった。過去の取材先の皆さんをはじめ、たくさんの方の支援もあって、目標金額に達成することができた。取材が始まる前から、念入りに準備を進め、何百人もの方へダイレクトメッセージを送り、毎週のように新着情報を上げ、 SNSもできる限り活用してきた。もちろん、その成果も間違いなくあるが、僕は、この『d design travel』そのものに、人を巻き込む力があると信じている。本書の本質は、単なる旅行ガイドではなく、旅を通して、地域で努力している人たちの姿を伝えていくこと。そして、地域の「らしさ」や「個性」を守ろうと、呼びかけていくこと。「デザイン」自体が、意匠や美しさだけではなく、その土地で暮らすことに重きを置いた〝文化存続活動〟そのものであるように、僕たち編集部が目指しているのも同じ。そして、それは日本全国の地域が苦境にある今、むしろ求められていることなのではないか。そんな願いを込めて、あと10年、 47都道府県を制覇する日まで、みんなで頑張っていきたい。

いずれにせよ、皆さんのお陰で無事に「岡山号」が完成するのだが、五味太郎さんの『鬼』の表紙に、違和感を持つ人もいるかもしれない。なぜ鬼なの?と。岡山といえば、桃太郎伝説が残る土地。中でも、面白い話があるので紹介しよう。(・・・略・・・)

今号は、リモート取材にも挑戦し、岡山県に入る前から、岡山のキーマンの皆さんに取材協力していただいた。郷土料理や果物、民藝やデニムのことまで、何も知らない僕に、岡山の人は親切に教えてくれた。もちろん岡山に入ってからもさまざまな場所に案内してくれ、その都度、岡山県の生活が羨ましく思った。朝、太陽が昇ると、いつものように一つ一つの時間を、丁寧に過ごしていく。街でも田舎でも、仕事でも遊びでも、日常の生活を有意義なものにしている。それは 美しい暮らしに寄り添う、「民藝」などの産出にもきっと繋がっているだろう。桃太郎という〝仕事〟と、鬼という〝暮らし〟。 物語には対極の生き方が存在するが、岡山県の人々の中には、表も裏も、オンもオフも、分け目のない総括した生き方がある。それは「晴れの国」という安堵感がそうさせもし、サステナブルな地域づくりへの意識も高い。いいも悪いもなく、誰もが自由な生き方をしたっていい。それが岡山の気質なのだと思う。

(書籍『d design travel OKAYAMA』 「ちょっと長めの、編集長後記」より)


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