68:  勢い

何度かこのテーマで書いています。大好きな染色家の柚木沙弥郎さんが91歳の時の雑誌の記事に「人間はいつもワクワクしていないとダメなんだ」と言っていました。「情熱を持って白紙に向かっていけ」とも。

勢いがある人や店、会社は本当にそれを感じられる。それはアーティストでも俳優でもサラリーマンでも学生でも感じられる。人間は動物だから、それを感じる能力がある。

僕はその勢いが、無茶でも無謀でもいいと思う。それはそれでやはり「勢い」には変わりない。僕はちょっと前に、若いスタッフの勢いについて、自分の価値観でそれを否定したことがある。その彼女はみるみる勢いをなくし、違う人のようになってしまった。本当に反省しています。勢いは基本、止めてはいけないと思う。なぜなら、間違っていても、無茶でもその勢いは後から作り出せない。その勢いをそのままに、年配の僕らが導いてあげないといけない。ましてやブレーキなど踏んではいけない。

勢いは「情熱」とセットになっている。情熱も作り出せない。動物的なものだと思う。しかるべき時に、天から降ってくるようなものだと思う。だから、情熱があると感じているときは、どんどんやってしまえばいい。それが間違っていても、格好悪いものでも、それがあることほど、貴重なものはない。

そういうものがない頭のいい人は、理論で正当化しようとする。けれど、そんなものは何の価値もない。もちろん「情熱」や「勢い」と比べたらという話ではあるが・・・・。多くの人は勢いの重要性に気づかない。どこか冷静に常識的なこととして判断しようとする。けれど、そういう頭のいい判断が、世の中の創造性をダメにしていることが多いと感じる。世の中は、情熱を持った勢いのある人がほとんどを作り出している。

僕は会社を経営していた頃、数字など見なかった。数字を見てわかることを判断しても、予想できることが繰り広げられるだけで、創造性がない。そんな無難なことをしても何らワクワクしない。お金で勢いは作り出せない。情熱を持った無謀な人によってのみ、生まれるものだと思う。そして、その生まれた「勢い」をみんなが感じ、高揚して生きていることを感動する。