スタッフの商品日記 015 dリサイクルコットン靴下

リサイクルコットンとは
原料となる繊維の塊をほぐし、引き伸ばし、束ね、撚り(より)合わせる。そうやって糸をつくることを紡績(ぼうせき)といいます。紡績工程の中には針で繊維をすいて方向を整える場面があり、その時に大量に出るわたくず「落ちわた」はそのままでは糸になりません。廃棄されたり、布団綿の業者に売られたりします。

この落ちわたを原料として再紡績し、糸として生まれ変わらせたものが「リサイクルコットン」です。ただし、落ちわただけでは糸を作るには繊維が短いため、新しい綿を混ぜて作られることが多く、撚り方が強めなので、できあがる糸は固めになります。

ところが、独自の技術により、100%落ちわただけを原料とし、かつ、強く撚りをかけずに、柔らかで素朴な風合いを持つリサイクルコットンをつくることに成功した紡績工場があります。

つづく産業
その糸に惚れ込んだのが、国産靴下の一大産地、奈良県で1948年から続く糸商「萱澤商店」を営まれている3代目の萱澤(かやざわ)さん。萱澤商店は靴下やものづくりの材料として糸を提供するスペシャリストで、糸の卸業だけではなく、顧客のニーズに合わせた商品企画もおこなってきました。そして、前述の落ちわた100%のリサイクルコットンとの衝撃的な出合いを機に、2014年にものづくりブランドを立ち上げました。

ブランド名「saredo-されど-」には“落ちわたが紡ぐサスティナブルな暮らし”を提唱すべく、以下の4つのキーワードが織り込まれています。

Sustainable:持続可能な
Alternative:もう1つの選択・代わりとなる・異質な・型にはまらない
REnovation:革新・刷新・修理
DOmestic:自国の・国産の・自前の=DIY精神に則った

「たかが靴下」と思われるのでなく、「されど靴下」と思われるようなものづくりに携わりたい-という思いも込められています。

オリジナル商品の開発
D&DEPARTMENTとsaredoの出会いは2016年のこと。ひとつの県につき1冊ずつ発行してきたトラベルガイド本「d design travel」シリーズの奈良編を制作するにあたり、編集部が取材で奈良県を訪れ、ものづくりの産地を巡る旅をしていた時のことです。ちょうどD&DEPARTMENTの定番となる靴下をつくりたいと考えていた私たちは、saredoの “持続可能なものづくり”というコンセプトに共感し、共同で靴下を開発することにしました。

開発時は、それまでsaredoブランドで靴下をつくってきた萱澤さんご夫妻からご助言いただきつつ、幾度もサンプルを作っていただき、スタッフ達で試着しては意見を出し合いました。見た目のバランスの良さだけでなく、履いていてずれにくいこともリクエストし、靴下の丈、リブの編み方、はき口のゴムを編み込む部分の長さなど、細部にこだわった靴下ができあがりました。

つづく仲間
dリサイクルコットン靴下の製造は、1927年創業の靴下工場、株式会社創喜(そうき)にお願いしています。ここで主に使用されているのは、昔ながらの旧式の編み機。アナログな工程が多くて手間がかかるものの、“ここでしか作れない”という靴下を編めるのが強みです。saredoの糸は太さがあるので編める機械が限られますが、創喜なら太めの糸を用いた靴下も編めるのです。職人さんが超低速でローゲージ編み機を回し、片足ずつ丁寧につくる靴下は、機械で編まれているとはいえ、手作りのような風合いや表情を持っています。

一般的に、製品として完成した靴下は靴下の形をした金型に入れられ、ぴしっと形を整えてから出荷されます。一方、創喜では金型を使わない「置きセット」という方式にこだわりがあり、蒸気の熱で靴下の形を整えているので、ふんわりとした仕上がりになります。

つづく暮らし
身につけるものの中でも、靴下は消耗品に近いと言えるかもしれません。直に身体に接触し続けているし、靴に当たることも。その結果、部分的にすり切れたり、生地自体が薄くなってしまいます。

しかしdリサイクルコットン靴下では糸自体が太めで丈夫なうえ、その糸を2本揃えて編んでいるので強度があります。気に入った靴下を長くはきたい、傷みにくい靴下を探している、という方におすすめです。

カラーバリエーションは、「レッド」「アイボリー」「グレー」「インディゴ」「ブラック」の5色を定番として展開。シーズンによっては、更に「イエロー」や「オリーブ」といった限定色が加わります。色違いで持っていれば、靴下を目立たせたくない日も、逆に、差し色にしたいコーディネートの日も、使い分けられます。

これらの色は、2種類の異なる方法を使って染められています。中でもグレーとインディゴの2色は、手染めに近い工程も含む「スペック染め」という手法で染められており、味わい深い、独特のムラ感がある色味です。多少色落ちはしますが、経年変化を楽しめる素材となっています。

お気に入りのポイント
生地が厚めなので、冬はともかく暑い季節はどうかしら…と思いきや、天然素材の綿が気持ちよく汗を吸ってくれます。さらりとした肌触りが持続し、比較的蒸れにくいです。蒸れにくいということは、汗冷えもしにくいということ。かつ、はき口のゴムによるしめつけも強くないので血行を妨げにくく、冷え性の人向きと言えるかもしれません。厚みは好みの差が出るかもしれませんが、個人的には一年中デイリーにはきたい靴下です。

私はこの靴下と出合うまでは、あまり考えずに靴下を選んでいました。次第に薄くなっていくのは仕方ない、靴下とはそういうものだーと思っていたので、もったいないという罪悪感を抱きつつも、穴が開けば捨てていました。ですから、靴下を買う時は値段が安ければ良いと考えていたし、前述の「経年変化を楽しむ」ということは思いつきもしませんでした。

しかしこの靴下をはくようになって驚いたのが、それまでの靴下とは段違いに丈夫で快適な点です。これは長く付き合えそうだと思うのと同時に、もしかしたら廃棄されていたかもしれない落ちわたが、こうして靴下に生まれ変わって自分の元にやってきたことが感慨深いです。いつか穴が開く日が来ても捨てずに、リサイクルコットンの糸で繕いながらはき続けたいと思っています。

dリサイクルコットン 靴下の商品ページ