14 売る

マルニ60のオークフレームチェアを買ったお客さんから「10万円に近い商品を買ったのに、組み立ててもらえないのか」と、連絡を頂いた話を聞いて、ごもっともだなと思いました。コンセプトはさて置き、僕を含め、みなさんも財布の中に入っているのは、(もしくはカード) 汗水働いて貯めたお金。買い物の額が上がるほど、やはり、それに見合った待遇が欲しいと思うのは当然だと思う。2万円くらいの時計なら、雑貨屋に近い設えの店でも、なんとか頑張っていたら買う。しかし、10万とかの時計なら、そこで10万のものを買う納得感が欲しいのが普通である。

どんなにコンセプトがしっかりしていても、価格に見合ったものをお客さんという人種は求めてしまう。僕も、お客になった途端、「見合う待遇かどうか」を判断するし、期待する。「クレーム」とは、そもそもそのアンバランスさから芽が出てくる。そして、世の中のヒット商品とは、「思ったよりお得」なものであり、そこには「買い際」の納得感もしっかり組み込まれている。

1万円のものをヒットさせるには、まず、1万円のものだという説得力がいる。そして、その大半は「売り方」である。お客さんは目が肥えている。店の設えで、その店がどれくらいの価格帯のものを取り扱っているのかが、わかる。だからこそ、そこ店の中で、予想を超える価格のものを売る場合、それなりの「設え」をしないと納得されない。

店には「説得力」というカーベットが敷いてないといけない。大半のお客さんはそのカーペットの上に乗ってものを見定める。そして、商品の価格を見て、自然と、その価格に見合った待遇を求め始める。10万円に近い価格のノックダウン(組み立て式)の家具には、そういうイメージがついてくる。リサイクルだと言っても、1万円のものなら、それなりの設えが求められる。それが感じられないところからは、買わない。