特別公開|木村社長の連載 ❶

タオルの風合いを長く保ちたいなら、石鹸で洗うほうが絶対にいい。

僕は石鹸をつくる家に生まれ、学生時代に起業、長くIT業界にいました。木村石鹸に戻ったのは6年前。それまで石鹸の定義も知らなくて。社内で当たり前のことが、僕には面白かったりします。たとえば、「界面活性剤」とはどんなものか。天然の油脂とアルカリというシンプルな成分でつくられる石鹸も、界面活性剤の一種。物質同士の境界をなくし、混ぜたり乳化させる作用があるもの全てを界面活性剤と呼ぶので、範囲がすごく広い。この言葉にマイナスイメージを持つ方も多いのですが、そのものに良いも悪いもありません。洗剤などに使われる大部分の界面活性剤は、「合成界面活性剤」と呼ばれるもの。なかでも洗浄成分をメインに使うものは「合成洗剤」と呼ばれ、石鹸に比べてとても複雑な構造をしています。石鹸のデメリットを解消する様々な工夫がなされていて、進化も著しいのですが、タオルや肌着など、直接肌に触れるものを洗うなら、僕は石鹸が向いてると思います。

合成洗剤は、洗浄力は高いのですが、繊維への浸透力も高い。すすぎだけでは成分が落ちにくく、蓄積していくと風合いが悪くなっていきます。そこで、風合いを良くするために柔軟剤を使うのですが、滑りをよくしたり、ふっくらさせるための成分を繊維に残し、これがタオルの吸水性を損ねていきます。その点、石鹸は大量の水に弱いので、すすぐだけでも、あまり成分が残りません。繊維に石鹸カスが残ったりもしますが、酸性のリンス剤などで中和して洗い流すことができます。柔軟剤のように繊維に成分を残さない分、繊維の風合いを損ねにくい。そこが決定的な違いです。最近、「すすぎ1回でOK」という洗剤もありますが、これは「抗菌剤や香料などを残して機能を保つ」のに好都合ということもあるのでしょう。実際、合成洗剤の場合、1回で成分を完全に洗い流してしまうのは難しいと思います。

ハウスケアブランド「SOMALI」の洗濯用石けんは、冷水にも溶けやすい液体タイプ(600ml 1,320円)。 衣類のリンス剤(600ml 1,265円)とともに、D&DEPARTMENT TOKYO、d47 MUSEUMで量り売りも可能。

石鹸は冷たい水や硬水には溶けにくく、液体石鹸は固まりやすいなど、使い勝手の悪さもある。ただ、合成洗剤と、石鹸で洗い続けたものを比べると、僕は石鹸の方が繊維の自然な風合いを維持してくれると思います。「IKEUCHI ORGANIC」のタオルを、僕は石鹸で洗います。この風合いを大切にしたいな、と。一度洗い方を間違えると、風合いをもとに戻すのは大変なので。洗うことって結構深く、知られていないことも多いんです。石鹸のメリットもデメリットもお伝えしながら、皆さんと一緒に掘り下げていきたいなと思います。

text:Noriko Suzuki
『d news 0号』(2019年6月・D&DEPARTMENT PROJECT刊)より、転載

 
木村 祥一郎|木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長
1972年大阪府生まれ。大学在学中にIT会社を起業。2013年に家業・木村石鹸に戻り、2016年同社代表取締役社長に就任。石鹸を現代的にデザインしたハウスケアブランド「SOMALI」を展開。 >> 木村石鹸工業株式会社

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