13 これからのd

ロングライフデザインの10か条など、活動の根幹に当たる部分の見直しについて、ここにチラチラと書いてきました。今日は、今、僕が考えている未来の「D&DEPARTMENT」についてお話しします。今のD&Dをこう変えていきたい!!ということではなく、今、D&Dを作るとしたらこうするという話です。そんなことを書いてどうするの??と聞かれそうですが、今のD&Dはもはや、2000年に作られた考えに基づいています。そして、それほど変わらずに今に至っています。また、各店のオーナーの意識、考え方によって、商品開発を積極的にやる店もあれば、地元のロングライフデザインを積極的に探し出し、紹介、販売している店もあれば、本部から送られてくる商品を決められたルールで販売することにとどまっているような店もあります。それはそれでいいと思っています。
私たちが想像している以上に、世の中に「ロングライフデザイン」は広まり、そうした店や活動も増えました。また、Webストアでの購入も、一般の人たち同士のUSED品の販売やり取りも、アプリなどの登場で簡単になりました。飲食も、予想以上に宅配が進化し、店で買い、店で食べるというスタイルそのものが、本当に激変し始めています。そんなこれからを考えて、2020年にD&DEPARTMENTができたら、どんな店にしたいか。ということを、今の状況を全く考えずに書き出してみて、みんなで考えたいと思って書きます。

まず、大きなところでいうと、Webで買えるような商品は取り扱わないと思います。現在は「世界、日本、その地域」のロングライフデザインを取り扱う、というルールですが、基本は残しつつ、商品の半分は「D&DEPARTMENTでしか買えないもの」「Webでも手には入るけれど、D&DEPARTMENTでしか体験できない提案があること」を条件にすると思います。もはや、オリジナリティのある提案もなく、ただ、どこかで買えるものを並べていても、人は買わないと思います。つまり、よほどのことを用意する必要があるのです。具体的にいうと、「その土地に長く続くものの進化に関わっているもの」とすると思います。これも「その土地に長く続くもの」を販売する店、Webはとてつもなく増えました。おそらく、現在は、そうした店が淘汰されている時代と言えると思います。だからこそ、D&DEPARTMENTも、考えを進化させ、「その素晴らしいものづくりの継承や、具体的な商品開発をする」特に意識したいのは「継承に関与する」というところです。
私たちD&DEPARTMENTは、各店、それぞれに地元の素晴らしい作り手を「販売」で応援してきました。しかし、それだけでは「次の時代に受け継がれ、続いていく」ことには、少し具体性が足りません。もちろん、ものが売れて、作り手も次の代の継承を「商売としてやっていける」などの考えからも「販売」は重要ですが、「継ぐ」ということには、もっと他にも必要で、そこまで踏み込まなければならない状況は、おそらく、日々、現場にいる皆さんなら気づいていることと思います。そういう意味でも、ロングライフデザインは10か条を定めるなどのことは大切ですが、もっと具体的に踏み込むことが、これからのD&DEPARTMENTがすべきことだと思います。
さて、半分はD&DEPARTMENTでしか手に入らないもの。そして、もう半分は形のない「コト」を販売していくと思います。おそらく、もう始まっている「コトの消費」「学びへの投資」は続いていくと考えます。昔は情報を付ければものが売れました。そうした購買はひと段落して、「部屋の中への見栄えの投資」から「自分への投資」に変わってきました。これは福岡や名古屋、大阪などの都市圏にわかりやすくあるもので、乱暴な言い方をすると、こうしたエリアでは、D&DEPARTMENTの2000スタイルは通用しないと言えると思います。だからこそ「自分への投資」ということで、「モノ」を売るのではなく「その手前にあること、暮らし」など、形のないものの「商品開発」が必要となると思います。そして、「コト」を買い、自身の成長手応えを得てから、それを日常化する道具としての「モノ」が必要となる。僕の家にも、使っていない鉄びんが2つもあります。それは、僕の問題です。ただ、そうした素晴らしい「モノ」を使うちゃんとした意識のある生活には、引き続き、憧れるわけで、簡単に言うと「鉄びん(モノ)」より「鉄びんのある生活 全10回講座」には、興味も、お金も使いたいと思うと考えます。
先日オープンした埼玉店には「D&DEPARTMENT」のサイン文字はありません。これは「活動を(コトを)メインとするD&DEPARTMENT」という意味で、通常の店舗のルールから外したモノです。おそらく、こうした新しい流れは増えていくと予想はしています。

今、中国にそうした2020年モデルとも言えるD&DEPARTMENTを作っています。これは「d news」というモデルで、正確に言うと、D&DEPARTMENTではありません。「その土地に長く続いているコトを使って、新しくモノやコトを生み出す合宿所」で、D&DEPARTMENT的な商品は取り扱いはありません。要するに、「モノ」を売るのではなく「つくり出す」のです。商品(d中国店として販売するもの)は、「作り手との時間」であり、「そこで一緒に作られたもの」です。それは料理や器に始まり、音楽や詩、絵や旅などもあるかもしれません。そして、この店舗スタイルは日本でも作られていくと考えています。「モノ」を買っても自分の生活や心はなかなか豊かにならない。それどころか、モノが増えていくばかりという状況を冷静に考えたいところです。多くの作り手は「モノ」を作りたいわけではないと、極論、思います。京都開化堂さんは、「開化堂らしいものづくり」そのものをどう伝えるか、悩まれていました。商品が売れても、「そこに至る思い」が伝わらないと、結局、「モノ」としてだけ取り扱われ、飽きられたり、使わなくなったりする。それがわかっているからでしょう。

こうして未来予想をしていくと、「モノを販売する」ということの未来が少し見えると思います。そして、私たちD&DEPARTMENTは、この、これからのために約20年間「モノを作らず」に、手本を集め、それに関わる人たちと交流し、深い関係性を作ってきたのです。それは都心から発信すれば済むものではないとも痛感し、「その土地らしさ」をテーマに「d design travel」を創刊。本の取材、編集、出版という体験もそのための蓄積です。

さて、このシナリオをどこまで実行するかは、まだ考えていませんが、これまで一緒にやってきたパートナーの皆さんや、同じ考えの皆さんと一緒に、時代の変化の波に、やはり、うまく乗れたらとは思っています。