スタッフの商品日記 002 アデリア60

60VISIONに参加し復刻した「ADERIA60(ロクマル)」

「60VISION」とは、2002年にD&DEPARTMENTと家具メーカーカリモクと共に始めた「カリモク60」を皮切りにスタートした、メーカーに眠る60年代に作られたものを復刻し、販売するプロジェクトです。1960年代は戦後から時が経ち、高度経済成長期へ突入、海外で起きたデザイン運動が日本にも入ってきたこともあり日本人の豊かな暮らしを作るため、各メーカー、デザイナーが奮闘した時代でした。そんな社会背景もあり、1960年代に作られた物には今に通ずるデザインの基盤や、普遍的な良いものが数々生み出されていました。
そのプロジェクトに、当時190年以上ガラス製造を手がけていた愛知県にある「石塚硝子」が2003年に参加することになりました。


「アデリア」のルーツ
当時はレストランなどの業務用食器を中心に製造してきた石塚硝子が、一般家庭向けに製造した食器ブランドの名前が「アデリア」でした。アデリアとは硝子発祥の地の一つ、アデリア海にちなんで名付けられ、1962年に販売がスタートしました。特徴はビール瓶と同じ素材を使ったカップ&ソーサーや、厚みのある愛嬌のある形が可愛らしいコーラグラスなどが人気商品となり、昔はどの家庭にもあるような食器として広がっていきました。



そして2003年、アデリア60として一番最初に復刻し販売がスタートしたのがこのカップ&ソーサーでした。

その翌年となる2004年、「ルック」シリーズから小鉢、豆鉢から販売がスタートし、同年コーラグラスが販売されました。ルックシリーズが生まれたのは、強化硝子などの新技術の開発により石塚硝子の技術力が成長した1960年代後半。その技術を駆使しデザインを意識して作られた最初の商品でした。特徴である押し型という技術で作られた模様は、欧米文化を感じさせるアイテムとしてその当時は喫茶店などの業務用として人気がありましたが、世の中のニーズがシンプルでさりげないデザインに移っていったことで、復刻時には現行品としては2種類のみになっていました。



半分手づくりの作業

復刻の際に必要になってくるのが、当時の商品の形を作る金型図面とその金型です。探して見たところ図面はあったものの、金型は見つからず作り直さないといけないという状態でした。金型からの生産となると大量生産用の設備や金型代など、いきなりスタートするには難しい条件が多い中で、工場と打ち合わせをすることで生まれたのが「半人工」の方法でした。その方法とは、溶かしたガラスを人の手で棒の先で巻き取って金型に入れ、プレスして作るというものでした。この方式により、製造数も抑えながら初期投資も当初の予算の半額で抑えられ、違う色を試せるなどの様々なメリットもありました。


限定カラーのコーラグラス

最初クリアのみでスタートしたコーラグラスは、限定カラーを販売し、徐々に色数を増やしていき、毎年限定のカラーを販売するまでになりました。これには単に色を増やすのが目的ではなく、復刻した商品をいかに長く売り続けるかを考えながらも、売り場に変化をもたらす試みとしての当時のナガオカのアイデアでした。
そしてアデリア60立ち上げ10周年の2013年には、コカ・コーラとのコラボレーションにより、使われなくなったコンツアーボトルを100%再利用した「ジョージアグリーン」が販売され、展覧会も合わせて企画、巡回しました。


アデリアを使ってみて

今の世の中に出ているグラスではなかなか見ない厚みが特徴的な、ルックコーラグラス。
このしっかりとした厚みは、ガラスの繊細さを少し忘れて使ってしまうような頼もしさが魅力です。それでも何気なくふと見た時に、ガラスの透明感やクラシックな型押しの立体的なデザインの作る表情が、ガラス素材の綺麗さを気づかせてくれ、不思議と使いたくなるグラスです。
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