秋山農園の味噌

d47食堂では、3月24日(月)から、お味噌汁に群馬県藤岡市にある秋山農園の味噌を使わせていただきます。

秋山さんとの出会いは、3年前の『d design travel 群馬』取材中に立ち寄った直売所。販売されていた「六条大麦茶」のすっきりとしたおいしさに感動したスタッフが秋山さんに連絡を取り、畑にお伺いしました。

六条大麦のほかにも、野菜や小麦を無農薬て?育てる秋山さんは、地元の若手農家やハ?ン屋か?研修に来るなと?、地域の健やかな食文化を育む指導者的な存在です。そうした営み全体を応援できたらという思いから、2018年1月からd47食堂で、2019年6月からdたべる研究所でも、使わせてもらうことに。そこから、何人ものスタッフが畑に伺い、農作業を手伝わせてもらいました。

2017年11月/麦蒔き

2018年5月下旬/麦の収穫

 

今回d47食堂でお出しするのは、2019年2月に秋山さんが無農薬で育てた大豆を使った味噌。私たちも、20kgを仕込ませてもらいました。

 

「昨年の味噌ができたよ。今年も仕込みに来る?」

 

そう連絡をもらったのは、今年の2月。昨年の仕込み分を受け取るため、樽を持ち、d47食堂とdたべる研究所のスタッフ4名で伺いました。

 

2時間ほどのドライブで秋山さんのお宅へ到着すると、昔から使っているという大きな鉄釜ですでに大豆を炊いていました。薪を使っているため、強火を保ち、この量の大豆を一気に炊ける。なんとも理にかなっていて、豪快です。

「これが味噌になるんだよ」

そう言って、炊きたての大豆を食べさせてくれました。ほっくりと甘い。味噌になるまでは、まだ遠い気がします。炊き上がった大豆を「味噌切機」に移します。

秋山さんのところでは、ご近所のみなさんと共同で味噌を仕込んでいます。大量の大豆を潰したり麹をまぶしたりと体力が入るので、家族だけでやるのは大変です。昔はどんな地域でも隣近所が寄り合って、味噌を仕込んでいたそうです。

私たちが伺った日も、近所の皆さんが集まっていました。機械も大豆も重いので、全身を使って、交代ばんこで味噌を潰していきます。今年の仕込みはこれで4回目。ご近所さんと一緒にあと3回は仕込むそうです。

作業がひと段落したところで、お母さんが大豆の煮汁を振舞ってくれました。じんわりと身体に沁みていく大豆の優しい味わい。大豆ってこんな味がするのですね。

ご近所の皆さんが味噌を仕込む間、私たちは大豆の選別作業をしました。

細かな作業ですが、みんなでやると楽しい。井戸端会議って、こんな感じかもと笑い合いながら、大豆をハネていきます。こうした大豆も飼っているニワトリの餌や畑の肥料にするそうです。

隣の部屋からは、味噌玉を叩いて丸める音が聞こえてきます。

甕を持参している方もいらっしゃいました。

いよいよ、私たちの番です。もらい物だという木桶を囲むと、先ほど潰した大豆が投下されます。そこへ、秋山さんが育てた米と麦で自家培養した麹を入れます。

それを“ドラえもん”の手で混ぜながら潰していきます。ここがいちばん力が要ります。

この時点でひと口食べてみると、大豆と麹に甘みはありますが、塩辛さが際立っています。本当にこれが味噌になるのと心配になります。

大豆がしっかり潰れたら、ハンバーグをつくるときの要領で空気を抜きながら「味噌玉」にして、甕に投げつけることで、さらに空気を抜きます。ただ、この投げつけるのが難しい。秋山さんのようには、なかなか上手くできません。

ぎゅうっと押し込めて、最後に塩をまぶし、これで作業は完了です。

身体が少し疲れた頃、お母さんがお昼ごはんを用意してくれていました。季節の野菜を使ったお惣菜、口いっぱい頬張りたくなる大きなおにぎり、お味噌汁や麦茶も、すべて秋山さんが育てた作物で作られています。

白菜の塩漬けに自家製の米麹を入れた漬物も絶品でした。身体が喜んでいるのを噛みしめるように、みんなで静かにいただきました。

原料となる大豆や米、麦の栽培から味噌の仕込みまで、すべて自分たちで行う秋山さんたちに、日本各地で続いてきた味噌づくりという営みの原点を、垣間見せて頂きました。自然の流れに寄り添えば、大豆が味噌になるまで2年はかかる。季節が変わるたびにお手伝いに伺って、移ろう景色のなかで一緒に作業をして初めて、体感できた気がします。

少しおこがましいですが、我が子のような味噌です。d47食堂まで、ぜひ一度、味わいにいらしてください。