SyuRoとものづくりをする、東京・下町工場めぐり

SyuRo代表・宇南山加子(うなやま・ますこ)さんは蔵前に店を構え、職人の技術を日用品に落とし込みオリジナル商品を企画しています。2019年に開催したもののまわりギャラリー「SyuRo角缶のもののまわり」の取材で、東京・下町の職人の工場を案内して頂きました。

D&DEPARTMENTの定番商品である「角缶」「丸缶」の工場取材と合わせて、”東京らしさ”を巡ってきました。

 

台東区・浅草アートブラシ

浅草で100年つづくブラシ工場。木造建築が主流だった大正時代、職人の仕上げ作業に欠かせなかった道具が「刷毛」でした。家一軒を建てるのに、柱や床、引き戸など各箇所専用の刷毛が必要であったり、列車の車両も木造だった時代、下町には刷毛屋さんが多くいた歴史があります。

大型工場で大量生産するメーカーの台頭で手作りの刷毛屋さんが次々と廃業する中、「浅草アートブラシ」はドイツ製の特注機械を導入し、現代の暮らしに合う家庭用ブラシの商品開発にも積極的に取り組んでいます。

職人の特注道具を数多く作ってきたからこそ、家庭で使いやすい大きさや形状、毛の種類を熟知しています。毛は、馬・豚などの動物毛をはじめ、シダなどの植物を使うこともあるそうです。鉄道会社からの注文ひとつとっても、トイレ用のブラシや車体用のブラシなど、様々な仕様のブラシをあつらえています。

宇南山さんがキッチンブラシを作りたいと考えた時、ブラシを作るなら絶対にここ!と迷わずデザインの相談に出向いたそう。「ナラのキッチンブラシ」は柔らかい豚毛を使用しています。

(D&DEPARTMENT では、浅草アートブラシの「かんたん毛玉とりブラシ」を販売中。詳しい工場レポートはこちら。)

 

墨田区・指物益田

墨田区にショールーム併設の工房を構えている、指物職人・益田大祐さん。釘や接着剤を用いずに木を組み立てる技術で作られる「指物」は建築から日用品まで、スケールの幅が広いのが特徴です。

宮廷御用達の、漆塗りや箔が施された華やかな印象の京都指物とは雰囲気が異なり、木目を活かし、組んだ跡が分からないほど簡素で「粋」な江戸の指物。益田さんは「江戸指物」の職人に弟子入りして従事してから独立し、歌舞伎の役者が使用する化粧台などの特注製作など江戸らしいものづくりもする一方で、携帯可能な組み立て式の茶室の開発などにも取り組んでいます。海外でも大人気。

宇南山さんが益田さんと手がけるオリジナル商品は、木材違いの展開に富んでいて、木とその仕事への愛が感じられます。大人も遊びたくなる「ガラガラ」や、アクセサリー職人だった宇南山さんのお父様が遺したデザインを実際に商品化した「book mark:minoru」を一緒に作っています。

クルミ、カエデ、ナラ、ヒバ見た目はもちろんですが、硬さや重さなどが異なります。つなぎ目の見えない「指物」の魅力に引き込まれていきました!

木造の家屋がメインだった江戸時代には火災がよく起こったため、現在の「新木場」は建築用の木材のストックエリアになっていたなど、江戸らしいエピソードも。

木造建築を支えた「指物」技術と、その仕上げに求められた上等な「刷毛」。職人と職人の信頼関係が、下町の「縁の下の力持ち」だったのかもしれません。そんな東京らしさを感じることができました。

そんな職人の技術が生きる日用品、少しづつ揃えていきたいなと思いました。

ギャラリー会期中に開催した「もののまわりトーク-下町のものづくりの産業を知る-」でもその下町の様子をお話頂いています。その開催レポートはこちら!
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