鹿児島 種子島の鋏と庖丁

鹿児島県の南に位置する種子島。海岸で多くの砂鉄が取れたこともあり、古くから鍛冶が栄えていました。「たたらの島」と呼ばれた種子島に1543年、鉄砲と同時に伝わったのが種子鋏の始まりとされています。

 

最盛期には30軒近い製造所があり、日本各地に卸していましたが、現在は2軒のみ。梅木本種子鋏製作所、池浪刃物製作所は製造スタイルは違えども共に種子鋏の技術と切れ味を後世に残していこうとしています。

 

今回は梅木本種子鋏製作所、池浪刃物製作所の2軒の鋏と庖丁をご紹介します。なかなか触れる機会の少なくなった種子鋏の文化や歴史を広く知ってもらうと共に、それぞれの使い心地を比較しながら、長く寄り添う日常の道具を生活に取り入れてみてください。

鹿児島 種子島の鋏と庖丁

日程
2022/6/30(木)~7/26(火)
時間
10:00~20:00
場所
D&DEPARTMENT KAGOSHIMA by MARUYA Map 鹿児島県鹿児島市呉服町6-5 マルヤガーデンズ4F

●お問い合わせ:099-248-7804(鹿児島店)

種子鋏の特徴
切れ味よく長く使える仕組みや、なかなか気付きにくい製造の跡、種子鋏らしさを感じる箇所など、種子鋏の特徴を3点ピックアップしてご紹介します。
「ねり」と呼ばれる反った刃
種子鋏は刃と刃が常に一点で交わるように、弧を描くように曲げられています。この曲線による反りを「ねり」と呼びます。
一点で交わることで、ティッシュペーパーのような薄い紙から厚手の布まで簡単に切れるほど切れ味もよく、軽い力で切ることができます。
また切るたびにジャキジャキと刃がこすれ合い、同時に自らで刃を研ぐ仕組みになっています。この仕組みで長く使っても切れ味の落ちにくい鋏になっています。
組み合わせの目印「合判」
刃の根本を見ると、小さな穴のような印が見られます。これを「合判(あいばん)」といい、同じ合判のあるパーツを組み上げて一本の鋏になります。
種子鋏は左右対称の同じ形のパーツの組み合わせなので、左右のパーツを作りわける必要はありません。しかし手作りゆえに、一点一点手作業で細かな違いが出てしまいます。もっとも良い組み合わせとするため、製作しながら相性を見極め、合判を打っています。
種子鋏らしさを感じる「ミナジリ」
腕部分の先端の細工を「ミナジリ」といいます。先端を小さな円形に丸めたもので、種子島で“ミナ”と呼ぶ小さな巻貝の尾頂に似ているところから名づけられています。
裁縫のときなどに布が引っ掛かってしまうのを防ぐとともに、種子鋏らしさを感じられる装飾にもなっています。
また、以後の加工の際に型に固定するための突起としても用いられるなど、製造においても重要な部分です。
鹿児島 種子島の鋏と庖丁

梅木本種子鋏製作所

梅木本種子鋏製作所の梅木昌二さんは県外の金属関係の会社に勤めたのち、種子島へ帰郷。鍛冶屋として37代続いた牧瀬義文さんの外弟子として技術を継承する。刀鍛冶さながら昔ながらの製造法で現在も種子鋏を作り続けているのは種子島では梅木昌二さんのみである。

鹿児島 種子島の鋏と庖丁

池浪刃物製作所

先代まで旧式の鋏造りを継承してきたが、機械技術を取り入れ効率良く安定した生産に成功。何十年と背中を見て学ぶ経験と勘の技術伝承ではなく、数値化と機械化によって種子鋏の技術が後世に残るようにした。黒仕上げの種子鋏もここ、池浪刃物製作所が生み出したものである。