2010年10月17日 11:12更新
今回は講演会で陶器づくりに取り組む方々に向けてナガオカケンメイがお話した内容を詳しくリポートします。
「らしさ」をキーワードにスタートした講演。
企業の原点を大切にする60VISIONでの取り組みは「らしさ(原点)を見つめながら新しい商品を作っていくプロジェクトであることを紹介しました。
DESIGN BUSSAN NIPPONでは47都道府県の「らしさ」を展示。日本のらしさを感じてもらう企画展でした。
NIPPON VISIONでは60VISIONの「企業のらしさ」を「地域のらしさ」に置きかえた活動を展開しています。
これら活動を通して、日本じゅうを視察していて感じたこと。
1)作り手が若い
2)作られたものを見る場所がダサい
3)人やものにたどり着く手段もない
そこでデザイン感覚のある道の駅のような場所を47都道府県につくることをスタートしました。
現在は東京、大阪、札幌、静岡、長野、鹿児島の6店になりました。
もうひとつ、デザイン感覚で日本を紹介する観光ガイドつくりもしています。
観光を若返らせ、若い人々に具体的につくりての環境にきてもらうことを目的としています。
1号目は北海道、2号目は鹿児島、3号目は大阪、現在は長野号をつくっています。
年に4箇所つづ12年ぐらいかけて、その土地らしいものを取り上げていきます。
最新の情報ではなく10年経っても20年たってもあるであろう場所を紹介しています。
デザインが入った日本酒のボトルや旅館など、デザインのめがねをかけることなく、何かを見るということは少なくなってきたと思います。
価格や競合との競争ではなく、自分自身らしさをみつめる「らしさ」
いろんな土地をまわりながら感じた8個のキーワード
1 売り場、売り方の思い
作り手が自分の思いを伝えてくれるお店を持っていたり、そういうお店に通っていたり、売り場や売り方に対する関心がとても高いことは良いことだと思います。
D&Dでは工場見学をしたり、作り手の実演講演会をしたり、思いを知り、伝える工夫をしています。
D&Dに売り込みがあった場合、取り扱うか否かの判断基準は、消費の魅力、作り手の魅力、継続性、チーム力、発信意欲など9つのチェック項目があります。
つまり「語るものがないものは、欲しくならない。」のです。
2 広報への関心
こまめに情報を発信している。ホームページを立ち上げたのに3年間更新していないとか、よくありますが、、、。
人に伝えるための書類の書き方を知っている必要はあります。
「広報価値があると思っていたら、お金をはらってでもすべき。」なのです。
3 商品開発
自分らしさを知っている、持っている人はすごいと思います。そして市場の動向に常に関心があること。
また、サンプル制作への情熱に感動させられることがあります。うすはりのガラスのグラスと高橋工芸の木のグラスに続く薄い陶器のグラスのサンプルつくりに土岐のカネコ小兵さんで取り組んでもらっています。
「らしさ+チャレンジ=ブランド」だと思うのです。
4 デザインへの関心
webに関心がある。更新をしている。パッケージや小さなグラフィックに関心がある。ヘタでもいいんです。関心があることが大切。
名前の付け方やブランドの作り方にも工夫が必要です。
例えば彼氏と旅行に行こうとした時、ホームページで旅館を調べてそのデザインがださかったら「この旅館、だいじょうぶかな?」と感じてしまいます。陶芸の世界にも小石原ポタリーや出西窯のようなデザインもあれば、この下石陶業共同組合のようなデザインもあります。
デザインに関心を持って取り入れるということは「今に関心がありますという意思表示」だと思うのです。
5 継続への気持ち
自分達らしいものを育てている。継続するための工夫をもっている。流行に関係なく生産を自分達のペースで行っている人達がいます。
D&Dの東京店は最寄りの駅から10分ぐらい歩きます。目の前の環八には通行人もいません。
情報発信をして、わざわざ来てくださる方を呼びこまなくてはいけないのです。
みなさんご存知のG型しょうゆさし。メーカーの社長は「売れたからといって製造ラインを倍にしたりせず、計画生産をしていたから継続してきた」と語っていました。
「麺がなくなったら終了」の潔さが継続するためには必要だと思うのです。
「つくれないという理由も、ブランドの大切な要素」であり、なんでもかんでも作れます!がんばります!だけが良いわけではないと思います。
6 自分の居場所を育てる
みんなが手がかりとするキーワードを育てる必要があります。
僕はデザイナーになった時、「デザイナーという言葉を育てなさい」と上司に教えられました。
現在は「ロングライフデザイン」というキーワードを育てています。
焼物のお祭りはたいてい、在庫処分セール祭りだったりします。栃木の「土祭」では、賛否両論ありますが、居場所を育てるという意味ではとても成功した事例だと考えています。今、デザイントラベル誌をつくりながら、企業に広告営業に行くと「北海道のためになるなら出します」と言ってくれるエアドゥやロイズのような企業に出会えました。ここで今、皆さんは岐阜に守られています。「岐阜県を育てることが岐阜での商売につながる」のです。
7 キーマンを明確にする
よそからお金で引っ張ってくる方法もありますが、それはキーマンにならないと思うのです。
あの県にはあの人がいるよ、という顔が見えるキーマンが必要です。
ナガオカが思うキーマンの条件には11個あります。自分のお金で行動している、いい人で書いてもしゃべっても上手、フットワークが軽い、家族ぐるみでもてなしてくれて上手、行政とも語れる、、、、などなど。
「キーマンはお金で買ってはいけない」のです。
8 自分のお金でやる
行政のお金を頼りにしない。みんなで出し合って行われたものの方が、根付くし、続くと思います。
益子のスターネットや鹿児島のDWELLなど。
「お金には2種類ある。1つは他人のお金。もうひとつは自分のお金。」
自分のお金でやった方が僕はいいと思います。
8個もありますが、これらをバランスよくすべてできること。ポイントはすべてやっていくことです。2、3個できてもダメなのです。
最終的に実現、継続するものは「思い」と「らしさ」なのだと思います。
質疑応答
Q.ショートライフデザインを含めて、今後の日本の市場はどうなっていくと思いますか?
ロングかショートか、どっちが正しいということは無いと思いますが、
以前、携帯電話の開発をした時に、ロングライフになる条件を出し、これを実行するなら引き受けましょうと条件を出しました。
メーカー側は承諾し開発がスタートしました。剣持デザイン事務所にデザインをお願いし、一緒に取り組んだのですが、携帯という存在自体がショートライフでした。華々しく登場したけどあっという間に0円になって終わってしまった。
その時、二度と自分としては、ショートライフなものづくりには関わりたくないと思いました。
Qロングライフデザインは60年代に生まれたようですが、その理由は何ですか?
60年代は今みたいにマーケティングをしていなかった時代です。ヒット商品をデータ調べたりもしていなかった。60年代生まれの僕はソニーやホンダが大好きでヒット商品もたくさん見ていた。創業者の思いが溢れ出ていたものが多かったと記憶しています。やっぱり「思い」が違っていた時代だと思います。
Q日本じゅうをまわって鋳物や漆も見られていると思いますが、陶器の世界はどのように見えますか?
土地の土を使って、土地の名前のついたもので、土地と一緒にはぐくんで欲しいです。
都市の街のど真ん中で全世界からネットで土やゆうやくを買い、ものづくりをしている人がいます。
おしゃれな雑貨としてはすごく新しいと思いますが、焼き物はその土地のものであって欲しいと思います。
その土地らしさにたどりつかないものはとても寂しいと思います。
Q ロクマルプラスを開発する時や、これから始まるロングライフを開発する時に、新規性とはどんなことだと思いますか?
原点を見ながら新しく作ったものがロクマルプラスです。「原点」も必要だし「新しい」も必要。
売上げ目標を原点商品で決めると、グラフが下がった時に廃番になっていまいます。
原点は目に触れるところに置いておきながら触らず、それを見ながら新しいものを開発するチャレンジをしなくてはいけないと思います。
Q 陶芸を学んでいる学生の中には、個人作家を目指している人もいて、一人で地道に少しづつ作っている人も増えていますが、どう思いますか?
以前学校で教えていた時に卒業したらどうするの?ときくと故郷に帰って地元を盛り上げたいと答える学生達がいました。
それは正直うっとうしいと思ったんです。そういう志があるならば、そういう志を持った人のところに弟子入りして欲しいんです。
ある程度、その人の教えを修得して欲しい。日本中、枝分かれが激しく起こっていると思います。今の若い人は器用だし、できちゃうとは思うけど、
それが良いとは思えない。ほほえましくて初々しくて可能性も感じられるけど、もう少し俯瞰で見た時に、産地にとってそれがどんなことにつながるか、はそれぞれ考えて欲しいと思います。
Q 人に伝える 発信 がとても不得意です。どうしたら良いでしょうか?
情報発信力のあるギャラリーやお店が増えてきています。メディアとのつながりがあるお店やバイヤーも出てきています。
そういうところと上手につきあっていくのが良いのではないでしょうか。
Q クラフトフェアについてどう思いますか?
日本中にクラフトフェアが増えています。作家自身が地元のことも考えながら行うお祭りはとても良いとは思うのですが、日本中に増えすぎていて、もはやメディア価値がありません。何かひと工夫、ふた工夫が必要だと思います。
Q スライドででてきたキーマンは、他の地域の人達と何が違うのでしょうか?
先駆者であるというのが大きな違いだと思います。小枝分かれする前の本流。誰かを真似してスタートした活動ではなく、そういうものが無かった時代につくった人であることです。
Q 作る側の思いと使う側の思いが一致すればハッピーですが、それが合致しない場合には、どうしたら良いのでしょうか?顧客満足度についてどう考慮していますか?
60VISION、実は生産終了していくメーカーも出て来ています。60を立ち上げた当時に比べると2010年現在、ものづくり企業の状況は悪化しているように感じます。
60的商品を持ち続ける余裕が無くなってきています。ですが、そういう企業としてのマインドは失ってはいけないものだと思います。
まだまだ質問は続きそうでしたが、時間切れで終了となりました。
第2部は主催となった下石陶交青年部の方々とディスカッションの時間を設けました。
これからの地域の盛り上げ方、陶器祭りのあり方などについてお話しました。
次の世代を担う皆さん、日々も模索しながらものづくりに取り組んでいらっしゃいます。
リアルな製造の現場のいる方からの質疑応答は、納得のいく回答、納得のいかない回答、、、
と両者不完全燃焼のままに終了した感があります。
もっと突っ込んだ話をしよう!ということで、第2回の開催が計画されています。
1回目に参加された方々にお知らせがいくそうですので、ぜひ、不完全燃焼だった思いをぶつけて欲しいと思います。
ナガオカケンメイもできるだけ参加していく予定です!
D&DEPARTMENT PROJECT ディレクター 松添みつこ