2011年11月10日 19:52更新
一年で汚くなる1000円のお椀も
10年使って美しさを増す1万円のお椀も
年間使用料は同じ1000円だったら
気分よく使える1万円のお椀の方がずっと得だ
信州の漆器やさんに教わったこの価値観は
すべてのモノに当てはまると思う
目黒区美術館で開催中の『秋岡芳夫展』で見つけたこの言葉に、
私は深い感銘を受けました。
1920年に生まれた秋岡芳夫さんは、
50年代にはカメラや家電など、工業製品のデザイナーとして活躍しましたが、
60年代の大量生産・大量消費の社会に対して疑問を抱くようになり、
その後、97年に亡くなるまで、個々の使い手や地域の生産者に目を向けて、
良いものを長く使おうという活動をなさった方です。
その活動の内容はたとえば、メーカーとデザイナー、使い手でひとつのグループを結成し、
モノの長く使えるデザインについて考える場をつくり出したり、
手仕事の作品を展示するだけでなく、実際に触って、買える「展示販売」スタイルを始めたり、
北海道や岩手、島根の山間で、外に出稼ぎに行かなくても収入を得られるよう、
村民ひとりひとりに民芸品づくりを指導したり。
そのどれもが深い思索に根づき、アイデアが面白く、
しかも、考えついたアイデアをきちんと実行しているのが、本当にすごい。
「良いものを長く使おう」という思想や、
工芸品を展示し、同時に販売するスタイルなど、
D&DEPARTMENTの活動に通じる部分が多く、
見ながら勝手に「私たちの大先輩だ!」などと思ってしまいました。
(恐れ多いことですが。)
昨年の断捨離ブームや今年の震災を経て、
私たちは今、モノとの関係をもう一度見直す時期を迎えています。
モノと向き合い、様々なことを考え、実行した秋岡さんの半生は、
きっと興味深くご覧いただけると思います。
目黒区美術館の秋岡芳夫展は12月25日(日)まで。
ぜひ足を運んでほしい展示です。
商品編集部 ライター 松本典子