2011年10月21日 13:59更新
深澤直人さんがデザインされたダイニングセット「Roundish」の取り扱いを開始するにあたって、
先日、マルニ木工の方による説明会が行なわれました。
デザインや製法について、ひとつひとつ解説を受けていく中で、
「デザイナーは椅子を斜め後ろから見る」という話が深く印象に残りました。
インテリアショップに行った時、多くの人は椅子を前から眺めます。
けれど実際にダイニングセットを使い始めると、
ほとんどの場合は、リビングのソファに座って眺めるようになります。
その時に見る角度は正面ではなく、斜め後ろ。
だから椅子をデザインする人は、ちょっとしゃがんで、後ろ姿をチェックするのだそうです。
その話を聞きながら、私は山田詠美の小説を思い出しました。
「放課後の音符」だったかと思いますが、
年上の恋人を持つ、大人びた感じの女子高生が
耳の裏側に日焼け止めを塗るというエピソードが出てきます。
彼女の耳の裏側を見られる人間なんて、ごく限られています。
当時中学生だった私は、"親密な誰か"のために美しさを備えることに、
とても衝撃を受け、胸をときめかせたのを覚えています。
深澤さんのRoundishは、後ろ姿にこだわってつくられた椅子です。
4つの細長い脚部は座面の中央に集まるようにデザインされていて、
外側に幕板が無いため、後ろ姿はすっきりと、椅子のまるみを引き立てています。
また、脚が曲線的な座面にピタリとフィットしていて、緻密な美しさを感じます。
この椅子の後ろ姿を見る人間も、限られています。
デザイナーか、あるいはご自宅で、ソファから眺めている方か。
"親密な誰か"のためになされたデザインに、私は密かに胸をときめかせています。
東京店、静岡店にお越しの皆様、ぜひ一度、Roundishの後ろ姿をご覧ください。
商品編集部 ライター 松本典子