川崎和男審査委員長特別賞を受賞
D&DEPARTMENT PROJECT代表のナガオカケンメイです。
グッドデザインの文句を言うこと、早3年になります。
グラフィックデザイナーという紙と印刷の世界から、デザインが「消費」されるという「立体(プロダクツ)」の世界にどちらかと言うと、思いが移って5年。
プロジェクトとしてのショップを立ち上げ、東京店は3年、大阪店は1年経ちました。
ひとえにみなさんの応援をおかげと心底、思っております。
さて、このプロジェクトで何をしたいか。たくさんありますことのひとつが、Gマークをなんとかしたいということでした。
僕は「どんな場所に生息しているか」ということにとても興味があります。
自身が立ち上げたプロジェクトが、いったい、どのあたりの生態系に関わるものなのか。それを学んでいくうちに、Gマーク(グッドデザイン賞)というものにぶちあたりました。
もちろん、デザインが好きでありましたので、存在は知っていましたし、知人や元職場の上司などが審査委員をしていたので、より身近には感じつつも、なんでもかんでもGマークを認定しているその審査の甘さに腹も立っていました。
今から約2年程前になりますが、作りだす立場と作らない立場でのトークショーをやりたいという申し出を、Gマークを運営している日本産業デザイン振興会さんから頂き、発行している「DESIGN NEWS」誌の中で公開対談の形となって実現することになったことがありました。
京都のプロダクトデザイナーで、現在はアメリカのアップルコンピュータにデザイナーとして参加している西堀晋さんと、空想生活でご活躍の西山さん、そして、僕というメンバーでした。
(この模様はバックナンバーを是非、読んで欲しいのですが)そこでは、Gマークについては触れませんでしたが、「ものを生みだす」ことの責任をおふたりから、学ばせて頂いたように記憶しています。
そして、それが縁で「DESIGN NEWS」誌に連載を始めることとなりました。
山田編集長からのリクエストは、「文句を言え」ということでした(笑)。
では、グッドデザインの文句を...と、その時も提案したのですが、さすがにそれは...ということで、なんと、自身の場である「D&DEPARTMENT」の態度の悪いお客に文句を言うという前代未聞の連載となりました。
(現在は内容を変更し連載は続いています) それからしばらくたったある日、「ナガオカ君、Gマークへの文句をGマークのド真ん中で言ってみないか」という申し出を、産業デザイン振興会さんから頂きます。
これには僕も驚きました。なんと懐が広いというか、やんちゃというか。この時はとても胸が熱く感動した覚えがあります。この時に、きっと、僕の中で、審査の甘いGマーク! と、ただ、腹が立っていた思いが、少し愛情に変ったような記憶があります。
そして、当日。それは2002年のグッドデザイン賞公開審査会の会場の特設ステージという舞台でした。多くのGマークに関心のあるみなさんの前で「Gマークなんて取っても、売り方がないから売れません」だの、「Gマークの審査なんて、どうなっているか訳がわからん」だのと、もう、言いたい放題。少し後で思ったのですが、もしかしたら、Gマークに関係する方々も、なんともならない大きさになったグッドデザインという考え方をなんとかしたかったのではと思いました。
そして、この公開審査会場を見て、Gマークも持っていない立場で文句を言うのは筋が違う。そう痛感し、だめもとでエントリーを決意しました。
そして、新しく「新領域デザイン部門」というものが設定されていることを知りました。
よし、来年はGマークに少しでも参加した立場でものを言おう。
それが今回のエントリーでした。
プロダクトに限らず、こうした賞などの仕組みがあることで、見えにくいものが見えやすくなります。
僕はプロダクトの世界のこの「グッドデザイン賞」という仕組みに は大いに賛成です。
しかし、認定を受けた後が悪すぎる。誰も「売り方」を工夫しなかったので、通常の売り場で売ってみたり、また、売る力がなくて、受賞しても製品 化できなかったりと、問題があることも聞きました。
これこそ、D&DEPARTMENTPROJECTのやらなければならないこと。
もちろん、私たちは「プロジェクトナンバー 0011」として公言している通り、D&DEPARTMENT PROJECTの立ち上げの意志の中には「Gマーク」をなんとかしようというつもりではいました。
しかし、こうした一連のご縁もあり、それが徐々に鮮明になってきました。
「Gマークを取ったら売れないとおかしい」。
そう思うと同時に、仕入れ先である全国のリサイクル店を回っていて、なんとゴミと化したグッドデザイン商品が多いということも体感。
これではなんだか分からない。一部の「Gマークを取った」ということを宣伝文句に変えて、大々的に新聞などでPR出来る体力のある大企業を除いては、なかなか現実は機能していない。
2003年度の審査にエントリーするということにして、気の遠くなるようなエントリーシートを書き込むという作業が、また、私たちに多くを学ばせてもらいました。ここには「デザイン活動と社会性」についての項目が多く、「あなたのデザインは社会に何を提言していますか」という内容です。
つまり、「そんなものも持っていないデザインはエントリーすらできない」ということと等しい。ただ、いいデザインというだけでは、エントリーの時点ではじかれる。(このことについては日を改めて書きますが、このエントリーの時点で審査が甘すぎて、結果、社会的に何もない商品でも審査は通過している現状がある) 僕らの気持ちは引き締まり、何度も何度もプレゼンテーション用のB全のボードをやり直さなければなりませんでした。
正直、こんなに「自分たち」のやっていることを「表現」することが難しいとは思ってはいませんでしたし、活動を「一枚のボード」にすら、うまく表現出来ないようでは、とても無理だとも思いました。数日かけて、ようやく「言いたい事」を整理した一枚のボードが出来上がります。
この行為によって、わたしたちD&DEPARTMENT は何をもってPROJECTと言っているのか。自身にも鮮明に見えてきました。
公開審査の会場はプレゼンテーションの面積を買って行うということでした。私たちは、昨年の様子を見ていたので、ボードではなかなか伝わらないということを判断。
約10万円を払い、3メートル四方の場所を手に入れ、小さな「グッドデザインショップ」を作りました。つまり、「Gマークを販売、促進する場」というプレゼンテーションです。そして、広いと言われている日本で、こんな場所はあるか、と問いました。あなたたちが頑張ってエントリーし、受賞しても、それを効果的に販売する仕組みがない今、効果は発揮されないのでは...と。
約50万円ほどの商品をショップから持ちだし、展示。
それをもってプレゼンテーションとしました。そして後日のこと。2次審査に進む前に、わかりにくいものに関して、指名を受けて説明を求められる場があり、私たちはそこに呼ばれます。時間は約10分。
審査委員長の川崎和男さんも、その場にいらっしゃいました。
ここでは約30枚のボードにメッセージを書き、僕がそれを紙芝居のように読み上げ、進むというプレゼンテーションの方法を取りました。
コンピュータからプロジェクターを使って...という方法もありましたが、審査委員のみなさんはそんなのばかりを見せられていると判断し、あえて、アナログな仕方を考えました。そして、ひとしきりボードをめくりながら、一枚のボードで狭い会議室に笑いがおこります。「USED Gマーク」。
グッドデザインのマークの下に「USED」と入れた新しいマークのボード。おもわず川崎さんも笑いながら、「それは何?」と聞かれました。僕は答えました。「Gマークというのは、古くなって、もどの商品よりも優先的に買われていく価値の象徴でないといけません。つまり、リサイクル屋の私たちにとって、このシールが貼ってあるものは、商売になるものであってほしい。
今のGマークにはそんな"売り場"の視点がなさすぎる」と。
続けます。「つまり、わたしたちD&DEPARTMENT PROJECTとは、Gマークを買取り、売り直すシステムです」。川崎さんは一言いいました。
「ありがたいなぁ」と。長くなりましたが、これがわたしたちのグッドデザインとの格闘の一部始終です。結果は10月1日に頂き、2003年度グッドデザイン賞をめでたく受賞(これは本当に思ってはいなかった受賞でとてもうれしいです)。
そして、なんと審査委員長の川崎和男さんからの「審査委員長特別賞」も頂く栄誉となりました。これで、店にGマークを貼れる。
そして、社会的にGマーク消費に対して、また、問題のある部分について、「文句」を言える。そう今は思っています。
この栄誉を頂く前から企画していました、毎年、開催しています企画展、「D&DEPARTMENT PROJECT 2003」。
今年は「Gマーク」に関することをやりたかったのです。売るだけじゃなく、学びたい。そして、考えたい。
リサイクル屋でしか出来ない視点でGマークを見る。それが、審査会で笑いも頂いた「USED G」という展覧会です。「本当のGマークだけがリサイクルされていく」。それを目の当たりにできる。
ただ、それだけの多くを語らない展示にしよう。
今、それを具現化している最中です。
今日も消費されている「プロダクト」の中には、Gマークとはまったく無縁の「社会性」のかけらもないものもあります。それはそれでいい。
しかし、デザインに少しでも興味があったり、デザインで生活の糧を得ている人は、もっともっとデザインを「現場」から見る必要がある。
そう思います。グッドデザインはそれを40年も前からやってきました。
僕もそんなに偉そうには言えませんが、この歳になって、昔から知っていたはずの「グッドデザイン」という活動に対し、今一度、デザイン消費に取り組む立場として、考えたいテーマかなと真剣に思っています。
今年のテーマは「グッドデザイン」。
関係するみなさんも「受賞することが目的」ではなく、その後の「活用」を心配することこそ、これからのものづくりに必要なことだとも、思います。
ありがとうございました。