3日目は、県北の清里からぐうーっと南東へ、
ワイナリーがひしめく"ぶどう郷" 勝沼を巡りました。
"dマーク"の「勝沼醸造」(p. 038)ではバッジのプレゼントも。
この日、企画したスペシャルイベントは「冬のワインツーリズム」。
編集部全員で参加して、特集記事(p.082)になった、
「ワインツーリズムやまなし」の感動を少しでも実感してほしいと、
その縮小・濃縮バージョンを目指して企画しました。
本物のワインツーリズムにも関わっている、
ワインツーリズムと同じバスを手配。
さらに、"山梨ワインの生き字引"新田商店(p.036)の
店主・新田正明さんをガイド役に、勝沼の玄関「勝沼ぶどう郷駅」から出発です。
左からタビゼンの須藤さん、新田さん、ナガオカ編集長。
最初にバスが停まったのは、なんと道端。
素晴らしい眺望で、勝沼の様子が一望できます。
「一番高い富士山、二番目から四番目までは揃って南アルプス連峰にあり、
日本の高い山はすべて、山梨にあるといってもいいんです。
そんな山々にぐうーっと囲まれた盆地に、勝沼はあります。」
と新田さん。ここから、どのエリアでどんな葡萄が育てられていて、
どんなワイナリーがどんな想いでワイン造りに取り組んでいるか、
指でその場所を示しながら紹介する新田さんの話に、ぐいぐいと引き込まれて行きます。
左奥にうっすらと白く見えているのが南アルプス。
新田さん「昨日徹夜して、この黄色い冊子をつくってきました。
マップのページを開いてみてください。
地区ごとに土壌や気候の特長、取り組んでいる栽培者の気持ちが
非常に濃く現れているところを、私が勝手にエリア名をつけているんですけども、
今いるのは、この菱山、鳥居平地区です」
新田さん「勝沼という小さなエリアは世界的に見ても、非常に稀な産地。
なぜが稀か?世界各国、あるいは国内他県のワイン産地は、
"ワインのための産地"。
つまり、大きなワイナリーが小作人を雇ってワインを造るのが普通。
でも山梨は、栽培者、つまり葡萄農家ありきで形成された産地です。
もともとこの土地にいた農家がつくった葡萄をワイナリーに持ち込んで、
ワインをつくり、それをたしなんでいた "葡萄のための産地"。
だから、醸造家、栽培家が築いてきた関係というのは、複雑で、層が厚い。
そんなワインの産地は、世界中見渡しても、ほとんどないんです。」
新田商店で使える割引クーポンがユニーク。ちなみに「徹夜した」はジョークとのこと!
山梨ワインマップを頭に叩き込んで、次に向かったのは、葡萄畑。
鳥居平(とりいびら)という、地名の通り、祭りで鳥居の形に火送りをする斜面。
ここは、勝沼広しといえども、ワイン造りに最高の葡萄が育つとされる特級エリア。
この畑を案内してくれたのは、特集「山梨大学ワイン科学研究センター」(p.090)で
登場する、同大学卒業生でシャトレーゼワイナリーの戸澤一幸さん。
戸澤さん「ここは標高は450mで、昼夜の寒暖の差が、ワインに適した葡萄をつくります。
最近は温暖化がすすんでいて、この土地でどの品種の葡萄を育てるべきかは、
現在も試しながらやっています。
ワイン用葡萄栽培というのは、ちょっと前まで『メルロ』や
『シャルドネ』といった、有名品種の栽培ができただけで、
大喜びしていたんです。この土地で最高のワイン醸造用の葡萄は何か考え、
育てるようになったのは、本当にこの10年の間で進んできたことなんですよ」
新田さん「戸澤さんは業界でも非常に注目されている人物のひとりです。
南半球でワイン造りをしたいという想いもあるようですが
戸澤さんにとって『山梨でワインを造る』とは、
どういう意味を持つんでしょう?
戸澤さん「ニュージーランドで飲んだワインに感動して、
もし向こうで葡萄を育てたら本当に美味しいワインを造れるとは思うんですが、
向こうでワインを造ったら「人の家で仕事してる」って違和感が、
きっとぬぐえないと思うんです。
もし生まれたところがワイン産地という環境でなければ、
向こうで頑張ればそれでよかったんですけど、
僕は僕は山梨に生まれましたから。
せっかくワインを造れる環境があるんだったら、
向こう(海外)で知った技術や、この土壌との相性、学術的なことも
全部山梨にもってきて、この土地でなければできないことをやってみたい。
というか、やってるんです。
新田さん「戸澤さんはとってもオープンなキャラクターで、こうして、
一般の人が畑を訪れるのも歓迎されています。
だからみなさん、また、勝沼にきてくださいね」
戸澤さん「そうそう。団体じゃなくても、個人でもぜひ。
収穫のときなんて、人が足りなくて、
見学にきた人にも手伝ってもらうこともあります。
気づいたらすっかり夜で、みんなヘトヘトになってたり(笑)
あ、申し訳なかったかなって、あとから思ったりしますけど」
新田さん「怖いなあー。あ、皆さん。この人、こんなににこやかですけど、
現場では鬼のように厳しいので、ご注意です!」
戸澤さん「もちろん!いいワインを造りたいんで。
まあ、でも本当、またいつでも来てください。お待ちしてます」
バスを見送ってくれる戸澤さん。本当にありがとうございました。
こんな想いを持つ人が勝沼中に、いや、山梨中にいて、今日もワインを造っています。
このあと、編集部がオススメする「ワインツーリズム」ということで、
山梨を代表するワイナリーを巡り、ふだんじゃテイスティングできないどころか、
店頭に出てすらいないプレミアムワイン(新田さんは「トップ・キュヴェ」とか
「フラグシップ・ワイン」とも言ってました)を、
ワイン造りの現場で、造り手に直接話しを聞きながら、次々と味わっていただきました。
丸藤葡萄酒(シャルドネ/ドメーヌ ルバイヤート2007/プティヴェルドー2009)
中央葡萄酒(グレイス甲州 2009/ 2010、キュヴェ三澤 2009白/赤)
さらに新田商店に移動してから、新田さんのおばあちゃんがつくった煮物をつまみに、
戸澤さんが造ったシャトレーゼの甲州など5種。
最後はもう、テイスティングというよりも懇親会になり、
みんな、この日出会ったものを中心に(多い人では10本以上!)
お土産を買って帰りました。
でも、というか、もちろん、
僕たちが本当に楽しんでいただきたかったのは、
"美味しいワインの飲み放題" ではなく、
山梨のどんな人が、どんな場所で、どんな想いで、ワインを造っているのか
新田さんの正確で真心のこもった知識、そして情熱を通して知ることでした。
それを見事に実現くださった、新田さん。
本当にありがとうございました。
普段から新田さんとタッグを組んで、
山梨のワイナリーを紹介するツアーを年間何本も企画されています。
ご興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
さらに、「山梨ぐるぐる」は今回だけのイベントに終わらず、
11月初頭、新ワイン解禁=本物のワインツーリズムやまなしの時期にあわせて、
毎年開催できればと考えています。
これからも何度も何度も、行きます。山梨へ!