2009年8月15日 15:51更新
ルールがある。その土地のD&Dチームと取材してまわる。彼らが「地元人として」ピックアップした候補地と、僕が東京に届く北海道「情報」から取り上げた候補をまわる。僕が取り上げた候補は、雑誌、Web、テレビ、噂・・・・。あくまで「情報」として伝わってきた、漂ってきた北海道だ。そして、大多数の人はこの「情報」だけを頼りに、もしかしたらブログなどの評判、口コミという出来る限りの予防線をはってくる。いってみれば、どんなにこだわった上質な旅館も、レベルの低い、不衛生な旅館も、「写真一枚」で判断される場合がある。その写真が4枚に増えたり、プロのカメラマンが絶妙なトリミングで「いいとこだけ」を切り取る。そういうものを見て、「行く」のだ。はずすこともあれば、当たりもある。
札幌チームに僕のあげた候補を見せる。すると、「ナガオカさん、ここはね、ダメです」「レストランは最高ですが、宿泊施設の多くは管理不行き届きで、全体的にカビ臭いです」みたいな地元の生の声ではじき飛ばされる。「えっ! あんなに有名なのに・・・・」と思うのですが・・・・・・。
この雑誌はなかば、自分のために作っているようなところがある。旅先で、また、行く前にしかるべき人に「・・・県に行くけど、どこに行けばいい?」と必ず聞く。すばらしい旅にしたい精度をあげるためなのだが、「自分に近い」人の行動は、本当に役に立つ。言い方を変えれば、自分の感覚に近い人との出会いほど、行動範囲を広げてくれることはない。
D&D札幌チーム、すなわち3KGの佐々木さん、三浦さんと今日も一緒。さて、今日はどこへと確認すると、「ライジングサン」と書いてある。もちろん、それが歴史のある北海道のライブイベントであることは知っている。ちょっと憂鬱になった。
長い44年の人生の中で、大酒飲みをして、駅前の噴水に飛び込んだ経験はない。いわゆるディスコに行って、朝まで踊り狂った経験も、そんな仲間もいない。大学のサークルに入り、部会で不条理な酒を先輩から指示されて、飲んだこともないし、第一、大学には行っていない。大手企業に入り、体育系の先輩らと誘われるがままに登山部に入り、団体行動をともにした経験も・・・・・。
当然、何万人もの人間が一カ所に集まる「何か」に参加したことも、そんなものに誘ってくれる仲間もいない。僕にとって、まだ見ぬ「ライジングサン」は、盛り上がった飲み会の店を出て、繁華街の店先で「えっ、ナガオカさんもカラオケ行きましょうよ」と誘われているのと、ほぼ、一緒の感じである。
カラオケ好きの人にとって、カラオケの楽しさは、説明する必要はない。歳をとっていくと、そういう「説明のいらない」ことに抵抗をしだす。説明のいらない同じような仲間も少なくなっていくし、自分に説明できないことに恐怖すら感じる。
朝までつづく、巨大ライブイベント。彼らに声をかけられなければ、当然、この先、一生、僕は行かなかっただろう。
「とにかく、行く」という編集方針に従い、半ば、カラオケ同様の状態で僕は会場に向かった。いや、連れて行かれた。そんな気持ちはバレている。彼らも「もしかしたら、こういうのもdesign travel的にアリかもしれませんよ」と、言葉を添える。
夜の9時。事務所を出る。本当に行くのだ。日中もハードな取材をしたので、「やっぱりやめましょうか」と言ってくれるのを、実は期待していたが、やっぱり行くのだ。
だんだん近づいてくる会場。たくさんの警備員に誘導されて、駐車し、1キロ程はある会場に向かって歩く。大した街頭もない埠頭。低音がドスンドスンと響いている。とにかく大勢の人が、出入りしている。ゲートをくぐり、会場で食べ物を買い、ひとまず適当に座った。「あれは誰ですか?」「あぁ、エレファントカシマシっていう・・・」「あれが、エレカシ・・・・」
そのあたりから、僕の中になつかしい開放感のようなものが、自分でも感じられてきて、楽しくなってきた。
おそらく、僕だけがこうではないと思う。行きそびれている人も、昔行っていた人も、歳をとるとこういう場所にはこなくなる。
約2時間。会場にいて事務所に戻る。帰りの車の中で、「どうして大人になると、こういう場所にこなくなるのか」を、少し考えた。
僕の中ではひとつの答えが出ていた。「ライジングサンは北海道のdesign travelだな」と。「おじさん、何言ってんの? いまさら」と言われそうだけれど、僕にそう言い切られて、「行ってみようかな」と思う中年に向かって行くデザイン好きもいると思う。
会場で佐々木さんがつぶやいた
「こういうの見てると、僕らのやっている"デザイン"って小さな話しですよね」。その通りだと思った。
なぜ、ここに若者は集まるのか。それは、「無条件に楽しい」からだ。理屈も説明も不必要で、大人も子供も関係ないからだ。
旅をしていて、僕らは数十カ所のdesign travelにふさわしい場所を選んでいる。そこに共通しているのは、「快楽」に近いものがある。デザインに詳しい人が喜ぶのではなく、誰もが「いいね」と感じるデザインが施された場所。ひとつのポイントは「眺め」だ。デザインを主役にしている場所は、選定から外している。
毎年、この時期にぜひ、北海道のライジングサンへ。「デザインがどんなに理屈っぽくてダメ」か、よくわかりました。そして、こんなコメントを書いていることそのものが、ダサいと言うことも。
