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suiboku

富山県水墨美術館

  1. 豊かな水がつくりだす“富山の自然そのもの”の美術館。 横山大観、富岡鉄斎、川合玉堂などが描いた水墨画と、水墨調の作品だけを展示するモノトーンの美術館。
  2. 庭にただ1本の、しだれ桜。いつ訪れても感動的な四季の美。 ガラス張りの通路から見る、広々とした芝生の庭。刻一刻と移ろう光や、風にそよぐ枝、すべてが美しい。
  3. 地元のデザイナーを支える仕組み。 展覧会のポスターなどの印刷物を、1年交替で、富山県内で活動するデザイナーが制作。

雨が好きになる庭 六月に訪れた富山は、大雨だった。空だけでなく、海も大地も山々も、濃淡様々な灰色の中に融けて、そこにあるはずの大自然が、雲になり霧になりして、アルペンルートも黒部峡谷鉄道も、砺波平野の散居村も五箇山合掌集落も―恐ろしいようで美しい、水墨画の世界だった。神通川沿いにある「富山県水墨美術館」は、水墨画など、モノクロームの作品を中心に集めたコンパクトな美術館で、明朝書体に力強く一筆走らせたロゴは佐藤晃一氏によるデザイン。ポスターなどのデザインは、富山県内で活動するデザイナーを対象に公募していて、コンペを勝ち抜くと一年間の仕事を担当できる。地元の若手を活かし育てるべき、という佐藤氏の提案を実現した、素晴らしい取り組みだ。展示室で開催される企画展では、名作の数々を見ることができるのだが、ガラス張りの長い通路を展示室に向かう途中で、僕は満足してしまった。芝生に落ちる建物の影の形まで計算したような、広大な庭に、ただ一本のしだれ桜。細く美しい枝を垂らして、そよそよと風に揺れる葉の一枚一枚の様子を、一枚板の長椅子に座ってずっと眺めてしまった。蟬の声だけ、わずかに聞こえる。長椅子の隣に、高村光太郎の小さな裸婦坐像が展示されていて、その目は、 この椅子に座る人と並んで見るように、ちゃんと桜を見ている。とても優しく、きれいな横顔だ。真っ白な雪に埋もれる冬も、たっぷりとした八重の蕾が開いて、散る春も。〝心が通う〟美術館。(空閑理)