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kanaoka

金岡邸

  1. 富山売薬300年の歴史を学べる資料館。 富山のものづくりに今も息づく「先用後利」の精神を紹介し、薬売りが担いだ柳行李、お土産なども展示。
  2. 江戸時代の薬種商店舗を復元した建築。 漢方薬の原料となる生薬などを取り扱った「薬種商」。1981年に金岡家から県に寄贈され、翌年一般公開。
  3. 風流な庭を眺めながら、縁側でお茶を飲める。もちろん薬草茶。 素朴で寛げる休憩室。天皇や首相も訪れた邸宅では、落語会や健康講座なども開催。

商いと、ものづくりの〝富山標準〟 富山の産業といえば、売薬(配置家庭薬)。明治時代の薬種商「金岡本店」を復元し、売薬の資料館として再生したのが、富山市郊外にある「金岡邸」だ。展示室に入るとスパイシーな香り―植物系・動物系・鉱物系……約一七〇種類もの瓶詰めの生薬が並び、製薬の道具、富山生まれの「ムヒ」「ケロリン」などの紙箱や製品、実際に使用された柳行李(背負い籠)などを展示。「富山の薬売り」として知られた薬の配置人の数は、戦前には一万三千人以上にも上り、彼らは薬と一緒に、イラスト入り紙風船や、京都・大阪・東京などの流行や風俗を描いた版画を持参して、各地で聞き覚えた伝承話や民謡を伝え広めたともされ、非常に感度の高い、文化の伝道師だった。ここの展示パネルで「先用後利」という考えを知って驚いた。そして感心した。「薬売り」とはいうものの、薬は「配置」されるだけで、半年後や一年後に再び訪れ、各家庭で必要な時に使用した分だけ、代金をもらう。品質優先で物をつくり、人の役に立って初めて、商いが成り立つ―誠実で、真っ当で、誇り高い。そして、富山で出会った、酒・ワイン・和紙・家具・卵・薬・デザインなどをつくる人々は、みな、今も同じ精神を持ち続けていると、僕は思った。休憩室には、ポットに薬草茶が用意してあり、自由に飲んでいい。富山のものづくりにほとばしる、独特の正義感のようなものを、ここでゆっくり、感じてほしい。(空閑理)