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『うしとうそ』出版記念トークイベント「うしとうそのうら」レポート

2018年2月12日 公開

現在開催中のD&DEPARTMENT TOYAMA GALLERY「うしとうそ -とやまの土人形-」。富山出身のグラフィックデザイナー・宮田裕美詠さんの視点で、古くから富山に伝たわる土人形の魅力を捉え直し、紹介する企画展です。

展覧会と合わせて、書籍『うしとうそ』が出版されました。富山の土人形の魅力を写真家・小野田陽一さんの写真と、日本民藝協会会員の広瀬徹也さんの文章で紹介したこの本。とても嬉しいことに、この展覧会をきっかけに、宮田さんご自身が企画され、出版された本です。

20180211_1布ばりに箔押しの装丁。印刷はもちろん富山が世界に誇る印刷所「山田写真製版所」

20180211_2淡い青のグラデーションが美しい写真。写真家の小野田陽一さんが、すべてフィルムで撮影、ご自身で現像されました。

書籍『うしとうそ』の出版を記念し、出版記念トークイベントが開催されました。その様子をレポートします!


1月20日(土)、外は雪が舞っていましたが、会場は多くのお客様でにぎわいました。ゲストには発起人である宮田裕美詠さんの他、写真を担当された小野田陽一さん、文章を担当された広瀬徹也さん、そして企画展の為に「新しい土人形」の製作に取り組まれた、林ショップ店主の林悠介さんが登場。

20180211_3左から小野田陽一さん、宮田裕美詠さん、林悠介さん、広瀬徹也さん

本が出来上がるまでのお話や、本を作っていく過程でそれぞれが感じられたことなど、書籍『うしとうそ』の”うら”話をたっぷり伺いました。

■本を作ろうと思ったきかっけ
そもそも、展覧会の企画から、なぜ本まで作ろうと思ったのでしょうか。

宮田さんは、富山生まれ、富山育ち。仕事もずっと富山を拠点にされています。よく「なぜ富山にいるのですか?」と聞かれるそう。ご自身としては、特に理由はなかったそうですが、仕事で富山のことを知る度に、だんだんと「富山っていいかも!」と感じるようになったそうです。

そのきっかけのひとつに、D&DEPARTMENTが5年前につくった「d design travel TOYAMA」の取材があったそう。

富山のことを知るうちに、富山は、昔から民藝とのつながりが深い土地だと知り、いつか富山の民藝のことを伝えることをしたいと思っていたのだそうです。そんなときに展覧会の話があり、すぐに「土人形」をテーマにしようと決めて下さいました。

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元々、本を作ることが好きだという宮田さん。本を作ることは、あまりお金にならない仕事なんだそうですが、自分のやりたいことを形にする大切さを以前の職場で教えられたこともあり、今回も書籍化しようと決めたそうです。

■“うし”と“うそ”
今回の本のタイトルになっている“うし”と“うそ”。これは、“牛”と”鷽”のことで、鷽は、美しい鳴き声でも知られる小鳥です。なぜタイトルに、この2つを持ってきたのかというと、「完全に勘だった」とのこと!

しかし、実はどちらも富山の文化に根付いている「天神様信仰」と深いつながりのある生き物なのだと広瀬さん。

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牛は、天神様、つまり菅原道真が亡くなった時、牛の背に臥して「この牛が立ち止まったところにお墓をたてよ」といったお話が伝えられていたり、鷽についても、菅原道真が蜂に襲われた際に、鷽が蜂を退けて救ったというお話が残っているとのこと。(詳しくは、ぜひ書籍『うしとうそ』で!)

富山は、今でもお正月に天神様を飾る等、天神様信仰が残る土地。宮田さんは「勘」と言われていましたが、その直感は、しっかりと土人形に宿る富山の文化を感じ取っていたに違いありません。

■ページをめくるたび、引き込まれる土人形の姿
この本の魅力は、土人形と富山の繋がりを分かりやすい文章で知ることができることと、もうひとつ、土人形の愛らしい姿を小野田陽一さんの写真を通して知ることができるところが魅力。本をめくる度に、土人形の愛らしい表情に引き込まれて行きます。

この本のために撮られた写真は、すべてフィルムカメラを使って撮影されました。フィルムカメラを選んだ理由を小野田さんは、「デジタルカメラで撮影すれば、早くで分かりやすい写真がとれるけれども、今回撮影した土人形は、昔からずっと今に繋がっている手仕事。その雰囲気を伝えるために、分かりやすさより、味を大切にしました」と答えて下さいました。

また、小野田さんがイメージする富山は、純粋な白、青みがかった白なのだそう。土人形の背景の淡いブルーのグラデーションは、そんな小野田さんの富山へのイメージが表現されています。

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さらに、小野田さんは、「日本では、写真を家に飾る文化があまりないけれども、自分の写真をきっかけに、写真を飾る楽しさを伝えられたら」とも話して下さいました。

小野田さんがこの本の為に現像された写真は、展覧会の期間中、お店で特別に販売しています。こちらもこの機会にぜひご覧下さい。

■現代の新しい土人形
少し本の話題からそれますが、トークイベントでは、展覧会のために「現代の新しい土人形」の製作に取り組まれた林ショップの林悠介さんにもお話を伺いました。

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林さんが作って下さったのは、「牛乗り天神」「宝珠持ち上げ大黒」「鯛くっつき童子」の3つ。この3つは、それぞれ、富山に古くから伝わる土人形からヒントを得て、林さんなりにアレンジして作られました。

例えば、「鯛くっつき童子」は、「鯛抱き童子」という土人形を元に作られたもの。

20180211_16左が「鯛抱き童子」、右が林さんの「鯛くっつき童子」

海と縁の深い富山には「鯛」をモチーフにした土人形がいくつも残っており、「鯛抱き童子」もそのひとつ。通常、鯛と同じ大きさの子どもが、鯛を抱き抱える姿の土人形ですが、林さんの「鯛くっつき童子」は、ぐっと鯛を大きくして、子どもはちょこんと鯛にくっつく姿になっています。大きい鯛は力強く、鯛にしがみつく子どももコミカルで、小さくなったのに愛らしさは増しています。

最初は、全く新しいオリジナルの土人形を作ろうと思っていた、と林さん。でも、土人形のことを調べて行くうちに関心がわき、元々富山にあった形を、自分なりに解釈して作った方が面白いのでは、考えが変わっていったそうです。

展覧会では、古くからある土人形と、林さんの作られた新しい”富山の”土人形を対比しながら見ることが出来ますので、ぜひ会場でご覧下さい!
  
■うそ替え神事
トークイベントの最後に、今回は特別な企画を用意しました。それは「うそ替え神事」。これをやろう!と提案して下さったのは、広瀬さん。広瀬さんは、取材の中で、富山の神社でかつて行われていた「うそ替え神事」にすっかり魅了されてしまっとのこと。

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今は途絶えてしまったこの神事を、一夜限り、トークイベントの参加者と一緒に再現してみよう!ということになりました。

うそ替え神事とは、全国の天神様をまつる神社で行われている神事で、年に1度、その年にあった嫌なことを「ウソ」にしたり、「ウソ」をなかったことにしよう、という願いを込めて行われる神事です。

番号が書かれた鷽の人形を参加者に配り、「かえましょう、かえましょう」と声をかけながら、参加者同士で交換し合います。その後、宮司さんが福引きの要領でくじを引き、あたった番号の鷽を持っている人に景品があたる、というもの。全国的には、木彫りの鷽が使われていることが多いそうですが、富山では土人形で鷽が作られていました。富山と土人形の繋がりの深さが分かる行事です。

20180211_9土人形の鷽をひっくり返すと、お腹に番号が書いてあります。

現在は、富山では行われていないこの神事。参加者と一緒に一夜限りで復活させてみました。夜の雰囲気を出す為に、ちょっとライトを落としてスタートです!

まずは、自分の持っている土人形を「かえましょう、かえましょう」と声をかけながら近くの方と交換して行きます。

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ただ「かえましょう、かえましょう」と声をかけて交換するだけなのですが、照明が暗いからか、なぜかとても楽しい!「交換終わりです!」と声が掛かると、参加者から「えー!」と残念そうな声がたくさん。

いよいよ、クライマックス、あたりの鷽の発表です。今回は、宮田さんが作って下さった折り紙の福引きであたりを決めます。

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記念すべき1人目の当選者にプレゼントされたのは、、、「真っ赤な鷽」!洒落ています。

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2人目からは、当たった方が次ぎの当選者を決めるくじを引きました。

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2人目にあたったのは、、「真っ青なうそ」。富山の海のような深い色あいです。

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そして最後の景品は、、、「黄金のうそ!」絶対いいことありそうです!

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うそ替え後は、となりの方とも自然と会話が弾み、普段のトークイベントにはない、アットホームな雰囲気に。きっと、昔の神事でも、うそ替を通じて人の輪が広がっていったのだろうな、と思います。実際、このうそ替神事、昔、意中の異性とふれあう心ときめく機会でもあったそうで、、と詳しいうそ替えのお話は、うそ替神事の魅力にすっかり引かれた広瀬さんが、書籍の中に詳しく書いて下さっているので、続きはそちらで。

本のうらばなしに、うそ替神事に、多いに盛り上がったトークイベントでした。

今回の展覧会では、トークイベントの他にも、土人形の絵付けを体験するワークショップも企画しています。そちらのレポートもお楽しみに!

D&DEPARTMENT TOYAMA 進藤