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錫光の錫器 受け継がれる伝統の技と、挑戦し続ける精神

2016年2月2日 公開

d47 design travel storeにて開催した、「NIPPON VISION MARKET -埼玉 錫光の錫器-」

会期にあわせて、1月10・11日の二日間、錫師の中村圭一さんと陽山貴之さんに店頭へお越しいただき、製作の実演を行っていただきました。

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錫器の制作は、大きく分けて鋳込み・ロクロ挽き・装飾の3つの工程があります。

 

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<1. 鋳込み>

まずは、錫の塊を溶かす作業から。錫の融点は230℃と低く、電気コンロでも溶かすことが可能です。鍋の中で液化した錫をお玉で掬ってみると、やはり水とは違う金属のずっしりとした重みがあり、不思議な感覚でした。表面の錫は、空気に触れるとすぐに酸化被膜(※)になってしまうため、取り除きます。(※金属の表面が空気中の酸素と反応して生じる化合物のこと)

鋳型に流し込む工程は、実演では割愛となりましたが、口頭で丁寧に説明してくださいました。鋳込みとは、溶かした金属を型に流し込み、製品のおおよその形を作るものです。型は新しいデザインの器を作る度に、セメントで自作しているとのこと。湯(錫)の温度が低すぎても型に上手く流れず、高すぎても固まったとき表面に結晶ができて、割れやすくなるのだそう。簡単そうに思える工程も、常に心配りが必要になります。

 

<2. ロクロ挽き>

型から取り出したものは完成品の倍の厚みがあり、鋳肌の鈍い質感です。これをロクロに取り付けて、カンナと呼ばれる道具で削り、粗挽き、仕上げ挽きと、少しずつ表面を整えていきます。

手元の繊細な感覚でカンナを小刻みに動かし、均一に削ることで磨いたようなツヤを出す作業に、思わず魅入ってしまいました。

 

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<3. 装飾>

最後に、表面に模様をいれる工程です。いくつかの技法がありますが、今回店頭ではカンナで筋を入れる方法と、金槌で鎚目を打ち込んでいく方法を見せていただきました。一筋、一目、流れるように精密に模様が入れられていく様子を、見学されているお客様も食い入るようにご覧になっていました。鎚目打ちを体験した女の子は、自分で打った模様がしっかりと現れていることに感動していました。

 

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今回、実際に作られていく過程を拝見し、カンナを使って筋を入れていく作業ひとつにしても、職人さんの呼吸のリズムがあることを知りました。一筋入れ、カンナを離し、次は連続して二筋入れる、というように、失敗できない緊張感の中で、手元の感覚に集中している職人さんの様子。その息づかいを間近に見たことで、機械のように狂いのない正確な仕事で仕上げられた作品にも、人の手で施されたという温かみが感じられる気がします。

 

このようにして、時間をかけて一点一点作り出される酒器は、しっくりと手に馴染む心地よい重さ。不純物を吸収するという特性を持つ錫器でお酒や水を飲むと、角が取れ口当たりがまろやかになり、二級酒が一級酒になるとまで言われていたそうです。

しかし、錫の加工には熟練の技術を必要とし、現在国内でも錫職人は20数名ほど。「錫光」は、伝統的な製法と意匠を大切に守りながらも、プロダクトデザイナーや利酒師といった異業種の専門家と積極的に交流し、今の時代にあった新しい作品づくりに取り組んでいます。

 

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COILというプロダクトデザインブランドとコラボしたTSUBOMIシリーズ(左:SAKURA/右:TSUBAKI)

砂を吹き付けるサンドブラストという技法で表面を仕上げ、鋳肌とも違う洗練された光沢。

形も今までの錫器にない、美しい丸みを帯びた、どこか女性らしさのあるデザインです。

 

長年受け継がれた技術と、若々しく柔軟な精神で、ただ一心に「良いもの」を生み出し続けている「錫光」の手仕事と、お酒を嗜む日常の何気ない時間をより豊かにしてくれる錫の酒器。

 

催事は28日に終了してしまいましたが、定番品でもぐい呑みなどの酒器の取扱いがございます。ぜひ店頭にお越しいただき、ご自身の目で、手で、確かめてみてください。

 

 

 


 

d47 design travel store 山口