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長文堂のデザイン

2015年11月27日 公開

2015年10月29日(木)〜11月25日(水)にかけて、2回目となる長文堂の鉄瓶の特集を行いました。前回の特集では、長文堂のこと、鉄瓶の作られ方や、お手入れ方法を紹介しました。今回は、長文堂が作る鉄瓶のデザインに注目してご紹介したいと思います。

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まず、見て頂きたいのが“鋳肌(いはだ)”です。鋳肌というのは、鉄瓶の表面の事。長文堂の鉄瓶は、表面に装飾がなく、砂型から出したそのままの肌が生かされています。滑らかな鋳肌は、それ自体で美しく、シンプルですが、品を感じさせます。

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この鋳肌の美しさは、山形鋳物の特徴でもあります。昔、山形では、市内を流れる川から、砂型に使う良質な砂が採れました。この良質な砂で作られた砂型が、鋳肌の美しさを生み出しました。長文堂のシンプルなデザインは、この美しい鋳肌を最大限生かしたデザインなのです。
次に注目して見て頂きたいのが、ふたのつまみです。このつまみ、今回ご紹介している8種類の鉄瓶、それぞれにモチーフが違います。
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「なすび」
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「梅」
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「菊」
他にも「貝殻」や「ザクロ」といった形のものもあります。 つまみのデザインは、縁起の良いものを選んで作られています。重厚感のある鉄瓶ですが、つまみのちょっとしたところに愛らしさがあります。
鉄瓶の形で、実はいちばん見て頂きたい(と、個人的に思っている)のが、注ぎ口の部分です。特に、私が惹かれたのが「新なつめ鉄瓶」の注ぎ口です。「新なつめ鉄瓶」の注ぎ口は、真横から見ると白鳥の首のように、細く滑らかな曲線を作っています。固い鉄でできているのに、優雅で、まじまじと見つめてしまいたくなります。
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右が「新なつめ鉄瓶」。左の「なつめ鉄瓶」と比べると、注ぎ口の微妙な曲線・細さの違いがよく分かります。
この注ぎ口の部分、見落とされてしまいそうな小さなパーツですが、とても作るのが難しい部分なのだそうです。特に、「新なつめ鉄瓶」のように細いものは、難易度が高く手間もかかります。同じ大きさの「なつめ鉄瓶」に比べて、値段が高い理由です。
 手間がかかる、という点では、こちらの「ぶんぶく急須」も見て頂きたいところが。
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「ぶんぶく急須」の後ろ姿。顔もかわいいですが、ちゃんとしっぽもあります。
「ぶんぶく急須」には、その名の通り、かわいらしい狸の姿と、小さなボコボコのある装飾が施されています。“鉄瓶”といったら、このような小さなボコボコのある装飾が、パッと思いつく方も多いのでは。
このボコボコした模様は「あられ」という名前がついています。
実は、このあられ模様、一つ一つの凹凸を、職人さんが棒を使って、手作業で形作っていきます
こちらが「ぶんぶく急須」の砂型の写真。
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一体何個あるのでしょう・・・!?気が遠くなるようなあられの個数。そして、とても人の手で付けたと思えないような、規則正しさ。洒落のきいた愛らしいデザインですが、気の遠くなるような職人技が詰まった、すごい一品でもあります。
切ないことに(といっても、職人さんにとっては当たり前のことなのですが)、長文堂の鉄瓶の砂型は、鉄瓶を取り出す時に壊してしまいます。つまり、「新なつめ鉄瓶」の注ぎ口も、あられ模様の砂型も、1個の鉄瓶を作るのに、毎回毎回、型を作るのです。
今回紹介している鉄瓶は、全部で8種類。どのデザインも、初代のデザインを受け継いで作られています。
現在、長文堂は3代目の長谷川光昭さんが継いでいます。長谷川さんは今年で40歳とお若く、私はお会いした時「自分のオリジナルの鉄瓶は作らないのだろうか・・・」と少し疑問に思いました。今回のイベントを機に、思い切ってそのことを聞いてみました。
すると、長谷川さんも、最初は「自分のデザインした鉄瓶を作りたい」と、新しい鉄瓶作りを試行錯誤されていたそうです。しかしある日、人伝いに初代が作った「なつめ鉄瓶」を、山形の「真下慶治記念美術館」の館長さんが愛用されていること、その方が「なつめ鉄瓶」の形を大変使いやすいと話されていたことを聞き、衝撃を受けてからものづくりの方向性を一転させます。
(「真下慶治記念美術館」は、『d design travel 山形』号でもご紹介しています。)
それまで、鉄瓶を作る事にばかり目が向いていて、使う人の声を聞いた事がなかったという長谷川さん。その出来事をきっかけに、初代のデザインを見直すことに。改めて初代のデザインを見てみると、これまで気づかなかった様々な工夫を発見し、考えら抜かれた完成されたデザインに長谷川さん自身感動されたところが多々あったそう。それ以来、新しく作るのではなく、初代が残したデザインを伝えていこうと決め、初代の残した30種類以上あるデザインから、特に優れたデザインのものを8つ選び、今も作り続けています。
同じものを作り続けることは、一見とても地味な仕事に思えます。それだけに、敢えてその道を選ぶ長谷川さんの姿勢は、作っているものへの自信と、その良さを伝えていこうという覚悟にあふれているのだと感じました。
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