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筑摩書房「ちくま日本文学」シリーズ  尾崎翠

2014年12月23日 公開

故郷を、都会的洗練で書き遺した、失意の天才 多くの文士達が、故郷を舞台にした素晴らしい小説等を遺している。林芙美子に慕われた、鳥取県出身の尾崎翠(1896~1971年)が30歳の時に書いた「初恋」は、受験生の「僕」が、夏の夜、受験勉強を放擲して、漁師で色男の親友・兼松と、女物の長襦袢を纏って盆踊りに繰り出す。島根県の安来節を自己流にアレンジして、浜にできた踊りの大きな円に飛び込む。「僕」は、月光の中で、ある女性の美しさに惹かれて、彼女の背中を追って群衆を離れ、砂丘を上がっていく―山陰独特の静けさや湿っぽさの中に、懐かしさと夢のような美しさを、僕は読み取った。代表作「第七官界彷徨」や、太宰治が激賞した「こおろぎ嬢」も収録の本書を、お薦め。950円。(空閑理/d design travel 編集部)