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工藝風向

  1. 都会的な「民藝店らしくない民藝店」。その最先端。 工藝に興味を持った若者が、最初に手にしてほしい物、かつ、工藝マニアが手に取ったとしても「いいな」と思える物―そんな究極的な物を揃える店。
  2. 福岡デザインの生き字引き・高木崇雄さん。 デザイン観の原点は、幼い頃に訪れた天神の「NIC(ニック)」。京都で河井寛次郎の書『おどろいている自分に おどろいている自分』を見て民藝に関心を深め、柳宗悦の著作を読み込んだ。
  3. 建築家・前田勝利さんの空間デザイン。 隣の「珈琲美美」に誘われて、一緒に現地に移転、同日オープン。大谷石の床に、シナベニヤの壁。重厚かつ簡素な、素敵バランス空間。

本当の贅沢 「けやき通り」の先にある、高木さん夫婦の店「工藝風向」は、僕のような民藝初心者でも、気軽に訪れることができる、敷居の高くない店。店主の高木さんと話すのが楽しくて、何度も通ったが、ある日、「『元祖長浜家(ラーメン)』のプラスチックカップが、蜷局を巻くように重ねて置いてあって、面白かった」と僕が言うと、「なるほど!」と高木さんが呟いた。「工藝とは、生活にリズムをつくり出すものだから、そのカップの置き方は『工藝』と言えるかも」。店頭に置く物を選ぶ基準を訊くと、「自分は、とてもケチなんです。そんな自分でも、これは欲しいな、と思える物」と高木さんは答えた。「デザインが好き」という人は、「次はイームズの椅子、いつかはポールセンの照明……」と、つい憧れの物を増やしたくなるが、「工藝風向」は、「これを買ったら、もう他は要らない」と思える店だ。そして、その「他」のためのお金を、レコードを買ったり、能古島で釣りをしたり、二日市温泉に浸かったり、福岡城址で凧を揚げたり、美味しい珈琲や地酒や食事に使えばいい、と僕は思った。福岡県は、「暮らしが好きになること」で、刺激的な環境がとても豊富なのだ。東京に戻って、原稿を一本仕上げて、「工藝風向」で選んで買ったグラスに酒を注いで、夜中過ぎに飲むと、格別の味がする。編集者の生活とは、昼も夜もメチャクチャだが、それでも、そのグラスでリズムをつくり出すことはできる。これが僕の贅沢だ。(空閑理)

本文の内容は、『d design travel FUKUOKA』掲載時(2014年)のものです。