D&Department

D&DEPARTMENT ネットショップへ

kyobun

蕎文

  1. グッドデザイン中小企業庁長官賞の蕎麦店。 建築家・濱田修の設計で2007年にオープン、翌年Gマーク受賞。1970枚の杉板を使用した外壁は柿渋と墨で塗装。三和土の土間や、藁スサ入りの土壁等、できる限り自然素材。
  2. 現役の家具作家・今井武文さんがオーナー。 KAKI工房で13年務め、現在も砺波市で家具を制作。ドアの把手、トイレの手洗い、細部まですべて見所。
  3. 県内外作家の器などを扱うギャラリーを併設。 ドアを開けるとエントランスは通り庭になっていて、左が蕎麦店、右が奥さんの経営するギャラリー。

〝徹底的な手打ち〟蕎麦店 最初に白状してしまうと、僕は体質的に蕎麦が食べられない。だが困ったことに、素敵な蕎麦店は多く、味や歯応え、汁の濃さ、薬味など、シンプル故に土地の個性が出やすく、特に富山のような名水と名酒の土地にあっては、「食べられないなんて、かわいそう」とまで言われ、がっくりきた。富山で、食べてみたい蕎麦店は、国宝・瑞龍寺から程近い、高岡市郊外の水田地域にあった。板張りの箱をひっくり返したような外観の「蕎文」。落ち着いた雰囲気の店内に、吹き抜けの天窓から自然光が射す。蕎麦は食べられないと伝えると、「え! かわいそう! 建築が好きなの? じゃ、ごゆっくり」と、鰹節を削る手を止めて、可笑しそうに言うのは店主の今井さん。家具職人の顔も持つ。だが彼は、家具だけでなく、この店そのものを、一年一〇か月もかけて友人たちとセルフビルドした。神社の建具のような、風雨にすり減った感じにしたくて、柱や格子の材は削って磨いてから使い、三和土の土間は桂離宮をサンプルに、地元・高岡の土でつくった。毎日掃いて、水を撒いて、使う人、訪れる人が気持ちのいい状態に、自分の手で保つこと、〝その手間もデザイン〟だ。後日、蕎麦好きを連れて再訪して、彼らは高岡の銘酒「勝駒」を片手に、色も盛りつけもきれいなじゅんさいとすだちの蕎麦をすする。音まで美味そうで喉が鳴ったが、僕には別鍋で茹でた素麺が運ばれてきて、ありがたく頂いた。とびきり美味しかった。(空閑理)