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一汁一菜から始めよう 春の会 d SCHOOL わかりやすい卵 レポート

2016年5月6日 公開

一汁一菜から始めよう

これは、元こんぶ土居3代目の土居成吉さんが引退後のライフワークとして続ける食を伝える活動だ。昨年、大阪府の和泉市医師会の創設50周年記念事業として映像付の小冊子が制作された。本イベントはこの小冊子を教科書としてより実践的な食の営みを学ぶ会として、年4回季節毎の開催を予定しています。

日本は島国。古来より魚食を基本としてきた。その理由は、日本の水が軟水である事に由来する。ヨーロッパ等のミネラルウォーターはエビアンやサンペレグリノ、コントレックスに代表されるように硬水であり、ミネラル分が多い。天然水にミネラルが含まれているという事は、土にもミネラルが多く含まれ、その土壌で育つ農作物にもミネラルがたっぷりと蓄えられる。結果、味の濃い野菜や葡萄ができるわけだ。ヨーロッパの人々は、土からのミネラルの恩恵を受けながら豊かな肉食文化を育んできた。

一方日本は、超軟水と言われるほどに水が柔らかい。その美味しさは、日本の水源を海外の投資家が買うと言うようなニュースからも伝わるように、クリアで優しい水が日本の天然水。ミネラルウォーターと言う言葉が、一般的に使われるが、日本の水にはミネラルは殆ど含まれていない。その証拠に、南アルプスの天然水の成分表示によると、100mlあたりカルシウム0.6~1.5mg、マグネシウム0.1~0.3mgとされる。やや弱めの硬水のエビアンですらカルシウム8.0mg、マグネシウム2.6mg、コントレックスにはカルシウム234mg、マグネシウムは37mgと、日本の天然水とは比較にならないほどのミネラル分が含まれている。
言われてみれば、「南アルプスのミネラルウォーター」ではなく、「南アルプスの天然水」という商品名だ。日本の水には、ミネラルが殆ど含まれていない。
結果、日本人は土からではなく海からミネラルを摂取する事になり、世界で唯一の海藻食文化が生まれた。日本人以外には、海藻を消化できる酵素が体内に無いのだそうだ。日本人は昆布を始めひじき、わかめ、海苔などたくさんの海藻を食べる。その結果海からのミネラルをたくさん吸収できるようになった、と言うのが土居さんのご意見。この説の学術的な信憑性は定かではないかもしれないが、非常に納得のいく話である。

昆布出汁の文化の背景には、日本の持つ土壌が深く関わっている。料理は、本来身体の栄養の為に生まれた。故に、長く続く食文化には、その時期、その土地に必要な栄養素がたっぷりと含まれた野菜や果物、そして旬の魚介類が使われる事が多い。これは何も味に限った事ではなく、旬の食材は栄養もたっぷりと含んでいるし、冬には身体を温め、夏には冷やす、そんな効果があるのだ。
出汁をとり、味噌汁をのみ、一杯のごはんと、季節のものを使ったひと皿を、ただそれだけで身体に良い健康な食事が出来上がり、皆で食卓を囲む事、それが幸せである。

一汁一菜から始めよう

この言葉には、そんなメッセージが込められている。
と、前置きが長くなりましたが、今回は卵について学ぶ会となりました。
一汁一菜の食卓にあるべき食材を考える、そんな思いから今回よりテーマを決めた食事を参加者の皆さんと食べようという事にしました。卵という、おそらく毎日食べているであろう食材をテーマに選んだのには、理由があります。毎日食べるという事は、1年で365個。お菓子や料理にも含まれる事が多いし、もしかするともっとたくさん食べているかもしれませんね。そういうたくさん食べるものこそ、身体に良いものを選ばなければならないのです。

前回ブログでも紹介した、大阪の養鶏家 タナカファームの卵を今回の教材として卵について学ぶ会としました。タナカファームの田中成久さんをお迎えして卵を学び、味わう会。

今回、卵について知って欲しい事は以下の項目。

1 平飼いって何?

2 有精卵ってどういう事?

3 黄身の色の話

4 ひね鶏の事

5 健康な鶏(卵)を育てる為に

それでは、ご参加頂けなかった方に順追って解説を。

1 平飼いって何?

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平飼いとは、地面で鶏を育てる事。当たり前じゃないかと思われそうですが、そうでもないのです。採卵養鶏(卵の為の養鶏)の99%はケージと呼ばれるカゴのような仕切りで鶏を飼育します。このケージは、多いところでは3段になっており、びっしりと鶏を詰め込み、鶏は殆ど身動きが取れない状態で飼育されます。これによる弊害は思いのほか大きい。ストレスによる病気の蔓延、それを防ぐ為の抗生物質の投与、3段ケージによる糞の問題。上から下へと糞が落ちるため、下段は不衛生。しかも、鶏は身動きが取れない。となれば、どんな環境かは想像が付きますよね?
平飼いは、当たり前の普通の養鶏です。地面で鶏が走り回ったり、餌を自由に食べたり、そういう事が全体の1%しかないというのは驚きで、非常に残念に思えました。

2 有精卵ってどういう事?

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卵を温めるとヒヨコが生まれる。小さい頃、一度は試した事があるのではないでしょうか。実際には、そんな事ってないのです。殆どの卵は無精卵、受精をしていない卵です。受精無しでも鶏は卵を産むのです。そんな事さえ知らなかった。鶏は、10日で8個ほど卵を産むそうです。生後100日あたりから卵を産むようになり、そこから2年ほどは卵を産みます。受精無しで。

タナカファームでは有精卵を冠しています。なぜ有精卵と無精卵があるのか。受精には当然オスが必要です。受精しなくても卵を産むのならば、オスを飼育する手間、コストをカットしたい、普通はそう考えるでしょう。栄養学的には、有精無精にほとんど差はないそうです。しかし、生物ですから、やはり命ある卵の方が良い、そんな理由でオスとメスを同じ鶏舎で飼育し、有精卵を育てています。見た目は同じ。けれど、温めるとヒヨコになります。ただし、一定期間冷蔵されたものはヒヨコにはならいそうなので、スーパーで買ってもヒヨコはかえらないかも。

3 黄身の色の話

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赤い黄身が美味しい、そんなキャッチフレーズがありますね。あれは、嘘です。とか言ってしまうと批判されそうですが、色は味とは無関係です。黄身の色は本来、黄身と言うくらいなので黄色です。餌に色素を含む飼料を与える事で、黄身の色を操作する事ができます。飼料メーカーはその色彩サンプルまで持っているとかいないとか。。。たしかに、色の濃いものは味が濃そうに見えます。それは、先入観であり味とは無関係です。中には、本当に味の濃いものもあるでしょう。けれど、それは色ではなく飼料に由来されます。色が濃い卵を好むのは日本人だけ、海外ではそんな事はしないそうです。日本の美意識なのか、小細工なのか。情報と言うのはこわいもので、殆どの方は色が濃い事に価値を感じています。

4 ひね鶏のこと

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ひね鶏って耳馴染みが無いかもしれませんが、歳をとった鶏という意味です。食肉用の鶏は、若鶏と表記があるように、生後40~50日で肉として食べられるように成長します。採卵鶏は100日でようやく卵を産むのに。これは、品種の違いもありますが、やはり品種改良に依るところが大きいです。卵を産まなくなった鶏を食肉用としたものをひね鶏と呼びます。一般的には殆ど流通がないので食べる機会もあまりありません。今回は、タナカファームの鶏を参加者皆さんに召し上がって頂きました。味の違いは、歴然。タナカさんの鶏を食べたあとに若鶏を食べると、殆ど味がしない事に驚かされます。飼育期間はおおよそ500日程度。1年3ヶ月ほどだそうです。地鶏で120日。ブロイラーなら40日。当然、運動もしているので身は引き締まり、弾力があります。固いと言っても良い。けれど、この固さは、鶏肉でなければ普通の事です。赤身の牛肉、豚肉、さして変わらない。若鶏が逆に柔らかすぎるのかもしれません。味は、当然濃くて、噛むほどに味わい深いです。胸肉でさえ、しっかりと味があります。また、機会があれば召し上がって頂きたいです。焼きすぎない事に注意すれば、美味しく食べて頂けるはずです。

5 健康な鶏(卵)を育てる為に

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良い卵は良い鶏から生まれます。当たり前ですよね。出産がデトックスと言われるくらい、母体からの悪いものは生まれて来る子供、卵に影響します。健康でない鶏の卵は不健康である可能性が高い。健康な鶏を育てるには、当然飼料。そして、ストレスのない環境。こうやって考えると人間だって同じです。タナカファームの鶏の飼料は、人間が食べてもなんらおかしくない、むしろ美味しいと感じるものばかりです。ほとんどが国産の飼料、17種類ほどを自家配合。唯一輸入品のトウモロコシも遺伝子組み換えでは無いものを使用。卵を買う時に、鶏の飼料を気にした事は一度も無かったけれど、健康な鶏が健康な卵を産む。そんな当たり前の事に気付かされました。

卵を学んだ後には、皆さんに卵と鶏肉の食べ比べをして頂きました。
卵は味の違いが一番わかるゆで卵に。鶏肉もシンプルにソテーに。スーパーで買ってきた国産若鶏とタナカファームの鶏を食べ比べて頂きました。

そして、今回の夕食はだし料理研究家のChieさんによる鶏飯(けいはん)レシピです。
鶏飯は奄美大島のおもてなし料理。鶏のササミ、椎茸、錦糸卵、海苔、パパイヤの漬け物、などの具材の乗ったご飯に、熱々の鶏がラスープをかけて召し上がって頂くというもの。大阪バージョンとしてアレンジをし、今回はタナカファームのササミ、錦糸卵、椎茸、刻み海苔、大葉、金胡麻、奈良漬け、柚子ピール、これに昆布だしベースの鶏のスープを注いで召し上がって頂きました。タイミング良くSHOPでは沖縄のやちむんを販売していたので、スタッフ持ち寄りでやちむんでお出ししました。(数に限りがあり、やちむんで無かった方々、お許し下さい)

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この夜は、会場のテーブルを一列に配置し一つの大きなテーブルを皆で囲む事にしました。
初めて会う同士も、いつの間にか打ち解けて下さったようでワイワイと食事をされていました。

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イベント毎にオリジナルのレシピを作成頂いてます。Chieさんの妹のhiroさんによるイラストがとても素敵。ダイニングの書籍コーナーでアーカイブ出来るように準備中です。

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毎回、だしの取り方レクチャーをChieさんにはお願いをしています。
今回は昆布だし。水に漬けて、火をつけ、後は引き上げるだけ、こんなにもシンプルな出汁は世界中探しても昆布だしだけでしょう。しかし、美味しいのだから驚きです。
次回は、どんな出汁を教われるのかキッチンスタッフも楽しみです。

昔、高級品でした。病気の方へのお見舞いに持って行くほどの高級品だった卵。10個で今の価値にして3,000円ほどだったそうです。60年ほど前までの話です。時は流れ、便利な現代では10個が200円もしない事も。これは、安いものを好む消費者に合わせるように、生産者がいかに単価を下げるかの工夫によって実現しました。その弊害は、見えないところで起こっており、結果ケージ飼い、品種改良等、本来の鶏の生態とはかけ離れた飼育環境で卵を製造するかのごとく、鶏を扱うようになったのです。生産者を攻めるわけにはいきません。より安いを求める消費者に合わせた結果です。基本的には人は雑食で、肉も魚も野菜も食べます。その為に家畜として動物を飼育する事もあるでしょう。それ自体が悪いとは思えませんが、やはり工業製品のように命を扱う事は避けるべきではないでしょうか。ヨーロッパはアメリカでは、すでにケージでの鶏の飼育は禁じられています。日本でも遠くない未来、ケージが禁止される日が来るかもしれません。

安いものにはそれなりの理由があり、その理由を知らない事に問題があります。今回、我々も卵にまつわる色んな情報を知り、店で使う卵を見直しました。
全てのメニューにセイアグリーシステムのセイアグリー健康卵を使用。一部のメニューにはタナカファームの有精卵を使用。どちらも、身体に優しい卵です。

「美味しいものを食べたい」という欲求は誰しもが持っています。毎回、食材の事を知る度に思うのですが、美味しいもの、美味しすぎるものには、やはり理由があるように思います(食材の話です)。不自然に味を調整しているのではないかと。一概には言えませんが、自然に育ったものは、濃厚ではなく純粋な味になります。「甘い」「濃い」には、何かしら不自然な理由がある事が多いです。(もちろんそうでない場合もありますが。)

タナカファームの卵は、透き通った味がします。ひとくち食べて美味しい!と飛び上がるような味ではありません。臭みのない、軽い味わいで、ふわっと口の中で消え、余韻だけが残る。そんな味です。お菓子などに使うと、白身、黄身の弾力が強く、生地がふんわり柔らかに仕上がります。まさに、生命力あふれる卵という感じです。これは、食感に大きな影響を与えます。

最後に、卵を買う時に考えてみて欲しい事。

卵は、動物性タンパク質なのです。1個約60g。肉が1円/1gだったら、安いと感じるように、卵も1.5円/1gでも決して高くは無いのです。ですから、特売品を買おうという気持ちも分からなくはないのですが、卵は安いものではないという認識を持ち、どの卵を選ぶか考えてみてはいかがでしょうか。買うという事は、応援をするということ。どんな養鶏家に長く続けて欲しいか。その他の食材に付いても同じです。D&DEPARTMENT OSAKAでは、これからも応援したい生産者の方と一緒に、食を提案して行きます。

一汁一菜から始めよう 夏

こちらもお楽しみに。
また、詳細は決まり次第公開して行きます。

d OSAKA
安達 秀人