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山梨ワイナリー研修「ペイザナ農事組合法人中原ワイナリー・ドメーヌオヤマダ」

2016年3月12日 公開

先月、スタッフで山梨県にあるワイナリーをめぐるワイナリー研修に行ってきました。定休日を利用して行ったため、今回訪れたのは「中央葡萄酒」「金井醸造所」「ペイザナ農事組合法人中原ワイナリー・ドメーヌオヤマダ」の限定3軒。今回ご紹介するのは、3軒目に訪れた「ペイザナ農事組合法人中原ワイナリー・ドメーヌオヤマダ」と醸造家の小山田幸紀さんについてのレポートです。「中央葡萄酒」についてはd47食堂、「金井醸造所」についてはD&DEPARTMENT 大阪店のHPより公開予定。


「BOW!」
これは訪問して最初にいただいたワインの銘柄です。発酵を止めたばかりということもあり、少し緑がかった濁りをみせつつも酵母のまだピチピチとした新鮮な口当たりと少しの甘みが心地よく、一切の雑味を感じない優しい味わいは「楽しく、美味しく」を追求した彼の生き物への愛情がたっぷり詰まった温かみのあるワインでした。

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16年間働いたルミエールを辞め、昨年の2月に初ヴィンテージをリリースしたドメーヌオヤマダ。彼がワイン造りをする場所に選んだのは山梨県勝沼町の静かな山奥でした。ワイナリーというよりは醸造施設といった雰囲気。建物の入り口にはひっそりと「ペイザナ農事組合法人中原ワイナリー」の看板が掲げられていました。ブドウ造りから醸造までをほぼ一人で手がけ「昨年は1万5千本くらい造りました。だいたい年間2万本くらいを目指しています。」と少しはにかみながら話してくださいます。16年間の醸造経験で培ってきた技術や、1人でやることの苦労などを決してひけらかすことはせず、こちらの質問に少し照れながらもさらりと答えてくださいます。その口調からは、生き物と真面目に向き合う小山田さんの真摯な姿を垣間見ることができました。

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彼の栽培・醸造スタイルは、無駄な手はできる限り加えずにブドウがもつチカラを最大限引き出すというもの。ブドウの果皮につく野生酵母のみで発酵させ、余計なものはできる限り加えません。しかし世にいう自然派ワインを造りたいのではなく美味しいワインを目指した先に見つけたスタイルなのだそう。

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彼の暮らしぶりを語る上で切っても切り離せないのが生き物と共生するということ。醸造所から庭へ通じる扉を開けると、籾殻とふかふかの土の上を数羽のニワトリが悠々自適に闊歩していました。ブドウ以外にも米や野菜を畑で育て、大好きなニワトリが産んだ卵とともにその命をいただくという循環型の生活が彼のごく自然で当たり前の日常です。「必要なものは造ればいいんです。できすぎちゃったら町の人に配ります。もうそのまま、土つきで。」飾らずに出来立てのものをいただく、しかも自分で愛情を込めて作ったものを。それが彼にとっての極上の毎日なのです。上の写真は小山田さんの特等席。

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「本当は長野でワインを造ろうと思っていました。」この言葉の通り、山梨県以外にも長野県塩尻市にある洗馬(せば)でもブドウ栽培を行っています。しかし、気温がマイナス15度に達するこの地でのブドウ栽培はとても厳しい。採れたブドウは四恩醸造でワインにして「洗馬」として昨年リリースされたそうです。ほかにも小山田さんを代表するワイン「BOW!」や「日向」、「万力」の貴重なエチケットを拝見させていただきました。

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「あるものを、あるがままに受け入れたい。」そんな生き物への愛情を込めて造られたワインは、まるで醸造所の庭で伸びやかに生きるニワトリのように生き生きとしていました。人間が生き物と真面目に向き合い、共生するということは人間が生きやすいよう上から押さえつけるというやり方ではなく、人間の手を加えない自然のままの姿をいかに保ち続けるかなのだと思います。ブドウも酵母も自由に生かし、小山田さんは特等席で一部始終を楽しみながらも常にその場の均衡を保っていきます。そしてしっかりと計算しつくされた栽培・醸造技術で「ここぞ!」というタイミングに必要な分だけ手を加えるのです。「百姓暮らしはサラリーをもらいながらやるもんじゃないです。」という小山田さん。その言葉の奥に隠された喜び、楽しみ、苦労などすべてを含めた生き物への愛情が、優しく温かみのある生き生きとしたワインを造りあげていました。

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※ペイザナ農事組合法人
2011年に山梨県の生産者が協業を図るため設立。小山田氏と四恩醸造の小林剛士氏が理事を務める。

※小山田幸紀
福島県郡山市生まれ。中央大学文学部卒の醸造家という異色の経歴をもつ。1998年株式会社ルミエールに入社し醸造責任者を務めるも2014年に退社。その後ドメーヌオヤマダを設立。


D&DEPARTMENT DINING TOKYO 水田由貴