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d design travel 埼玉号:編集部が感じた埼玉県とは?

2017年2月9日 公開

d design travel 編集部が感じた埼玉らしさとは?「埼玉号、完成直前!」というタイミングで、d design travel 編集部に新刊の埼玉特集号について聞きました。(D&DEPARTMENT 書籍流通チーム)

――今回の埼玉号の取材先はどのように決まっていきましたか?埼玉らしさをみつけるまでの流れを教えてください。

あまり埼玉県のイメージってなかったんですが、行ってみると、木々や緑が町の中で目立っていました。もちろん東京にも街路樹はあるんですが、埼玉はその規模が大きかったり手入れが行き届いていたり。何でだろうなと思っていた時に出会ったのが、「埼玉号」のdマーク(メインレビュー)に一番最初に決まった「さいたま市大宮盆栽美術館」だったんです。

日本での盆栽文化は江戸、つまり東京が中心だったけれど、関東大震災が起こって、盆栽業者の人々が埼玉県の大宮に移り住んだのだそうです。大宮は、東京という大消費地・文化の中心地にも近く、盆栽に適した土壌と気候だったんです。その人たちが盆栽町をつくって、そのまま根付いて、埼玉県の個性のひとつに変わっていった。盆栽だけではなく、植木産業や公園づくりなども江戸(=東京)との関わりの中で発展していきました。だから埼玉の自然は、ありのままの自然というよりは、人工的に整備された自然なんです。手付かずの自然のようでありながら、実は計画されて今の状態になっていった。雑木林や屋敷林、生け垣などのように、ね。

もともと武蔵国(むさしのくに)と呼ばれていた現在の埼玉県は、ススキ野原で、農業には向いていないような荒れ地だったところ、江戸に幕府が開かれ、人口が激増し、その需要に応えるため、江戸の武家屋敷の庭に植える木を育てたり、作物をつくれるように土を改良し、河川や用水路を整備していったんです。そんなふうに今の埼玉の環境ができていった。元々は埼玉と東京は別の文化圏ではなかったんだけれども、明治時代に荒川などの川や、山岳を境にして分かれてしまったんです。

だから埼玉県の木々や植物は、野原のような武蔵野の土地で、人間がいかに心地よく過ごすことができるか、を目的にしてつくられたというルーツがあるんです。だから、人の手が入っているからといって「偽物の自然」のような感じはあまりしないですね。心地いいことが前提なんです。その人間がつくった自然に、作物だって育つようになるし、鳥や獣も棲めるようになっていく。それが”埼玉らしさ”かな、と今では思っています。

そのような経緯の中でdマークに選んだのが「大宮盆栽美術館」と盆栽を販売する「清香園」でした。

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――「さいたま市大宮盆栽美術館」について教えてください。

まず、僕もそうでしたが、盆栽について何も知らずに行っても大丈夫です。盆栽の横に解説のプレートがあります。何を、どんなふうに見ればいいのかなど、鑑賞のポイントがすぐにわかります。はじめに根張りをみましょう、次は第一枝の分かれ目を見ましょう、など。その見方を憶えたらすぐに、そこにある一級品の盆栽たちをじっくりと見ることができます。さらに江戸時代にはどのように盆栽を鑑賞していたのかなどの歴史を、浮世絵などから知ることができます。ただ、解説がいらないくらい盆栽そのものに誰もが感動させられると思います。説明を受けなくても、美しさやかっこよさが伝わってくるんです。盆栽の、自然を小さくして表現するっていうのは、現代の日本のカワイイやフィギュアなどの文化に繋がっていったのかもしれないですね。生き物なので展示は一週間ほどで入れ替わるそうなので、訪れる時期によって違って見えると思います。また、盆栽美術館のある町自体が、江戸の盆栽業者たちが移住した土地なので、周辺の屋敷林や生垣にもどこか美意識のを感じることができます。

――dマークの清香園は美術館の近くにあるんですか?

盆栽美術館の裏にあると言ってもいいような立地です。盆栽美術館へいったら必ずこちらも行ってみて下さい。もちろん、盆栽の価格はそんなに安くはないですが。ここでは盆栽の手入れの仕方などしっかり教えてくれますし、ワークショップや教室なども開催しています。東京の表参道にもスクールがあるようですね。

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――d47 design travel store スタッフの田部井さんは、鉢を持ち込んで植え替えてもらっていましたね。

鈴木稔さんの器に植え替えてもらったそうですよ、なんて贅沢な(笑)。清香園で見た鉢は、いわゆる盆栽鉢だったので、もしかしたら植え替えることを前提に、販売時には一番シンプルな見せ方で置いてあるのかもしれませんね。盆栽は鉢も魅力のひとつみたいです。これも盆栽美術館で学んだのですが、そこで見た浮世絵の中の江戸時代の鉢は個性的でかわいかったです。今の時代の人もきっと自分のお気に入りの器や鉢に植えてみたいという感覚を持っていると思うから、鉢を選んで持ち込んで植えてみるという楽しみ方もあると思います。江戸時代の人たちもきっとそんな感覚で植えていたんじゃないかなと思います。なので、僕たちももっと自分の好きな器などに植え替えていいんじゃないかと思いました。盆栽業者の方からすると、水はけや素材など盆栽鉢に向いている物と向かない物があるみたいなんですが、そういうことも知れば知るほど盆栽に合った鉢を見つけてくる楽しみにもなりますしね。
そういうことを含めて、やはり「実店舗へ行く意味」があるなと思います。体験だけではなくて盆栽を実際に買うことができる。そしてそれはネットではその魅力が十分に伝わりづらいですからね。

――人の手が加わっているけど、どこか心地よい自然が埼玉の特徴なんですかね。

そうですね。緑だけじゃなく、川もまさにその一つです。埼玉県は、県土を占める川の割合が日本一なんです。例えば荒川は文字通り荒い川だったんだけれども、治水することによって水運に利用したり、飲用水にもなっただろうし、用水路を築いて新田を開発していったんです。

――dマークでは、ラフティングができる「グランデックス長瀞(ながとろ)ベース」や「首都圏外郭放水路」なんかが川と関わりがありそうですね。

ラフティングは秩父の山奥で、天然の荒川を体験できます。そこは激しいラフティングではなく、身体の鈍った僕みたいな人間でも気持ちよく川を下れました。ここだけの話、最初は本当に行きたくなかったんです。11月にラフティングなんて……って思ってたんですが、行ってみたら、ものすごく楽しかったんです。また行きたいなと思いました。

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――写真の編集部のみなさん、すごくいい表情をしています。

こういうアクティビティがあまり好きではない僕みたいな人でもかなり楽しめました。長瀞には、ラフティングの会社が十数社あるんですが、「グランデックス長瀞ベース」の設備が一番充実しているようでした。温水シャワーがあったり、更衣室が男女別だったり。ホームページも分かりやすかったです。近くの「長瀞オートキャンプ場」もdマークです。ここは荒川の上流、雑木林の中にあります。秩父鉄道の古い車両をバンガロー代わりに使ったりしていて、地元ならではの工夫などがありました。

――「首都圏外郭放水路」はどんな場所ですか?

こちらも同じく川なんですが、こちらは完全に人工の川。国道16号の下に人工の水路が6kmほど走っています。その地域には小さな川がたくさんあり、その川たちが氾濫してしまった時に街が水没してしまわないように、大雨などの時に、この放水路に水を流し込んで、最後には大きな江戸川に放水します。洪水から町を守るための施設なんです。地上は大きな公園というか広場で、サッカーなどができるようになっています。その広場の地下に貯水槽があります。機能的に必要なものだっと思うんですが、デザインが面白くて、巨大な柱が立ち並び、どこか神殿のように見える空間です。国土交通省が管轄する施設なので観光ガイドに載るのは嫌がられるかなとも思ったんですが、歓迎してくれました。見学することによって防災意識も高めて欲しいという事でしょうね。

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実は埼玉県内には放水路がいくつかあって、溜池なんかもたくさんあります。いかに水をコントロールするか、つまり治水が埼玉県の歴史でもあるように思います。昔は武蔵野の地というと、畑もつくれず木も生えていないような土地だったけれど、水をコントロールすることによって自然が豊かで人間が住める土地になっていったんじゃないかなと思います。

――そういえば、埼玉県の越谷に住む友人が昔、よく家が床下浸水すると言ってました。

越谷なんかはまさにそうですよね。「埼玉号」では取材には行けなかったのですが、2008年に街開きしたニュータウンの越谷レイクタウンなどは、ただのショッピングモールではなくて、溜池の新しい利用法なんです。貯水池を使った街づくりをしようとしたらあのような形になった。こちらもdマークの候補にあげたいと思っていましたが、治水という埼玉らしさで選ばれたのは「首都圏外郭放水路」でした。

――川と木、緑から見る、埼玉の魅力が伝わってきました。

今号でびっくりしたのが、高木崇雄さんは連載「民藝」で”川”について、坂本大三郎さんは連載「ロングライフな祭り」で”桜の木”について書いてくれたんです。他の原稿を見せたりしていないのに。そういう意味でも自分たちが出会った埼玉は間違ってなかったんだなと思います。

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