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夏の会ブログ1

子供を作る世代が受け継ぐべき「日本のうた」

2016年8月26日 公開

8/22(月)わかりやすい日本のうた夏の会を開催しました。福岡店では春の会に続き第二回目の開催。

今回の夏の会のラインナップはこちら。

  • 夏の思い出/江間章子詩 中田喜直曲
  •  / 林柳波詩    井上武士曲
  • 茶摘、夏は来ぬ、われは海の子
  •  /八木重吉詩 多田武彦曲
  • 待ちぼうけ/北原白秋詩 山田耕筰曲
  • すかんぽの咲く頃/同上
  • 浜辺の歌/林古渓詩 成田為三曲
  • みかんの花咲く丘/加藤省吾詩 海沼實曲
  • 風をみたひと/クリスティナ・ロセッティ詩 木下牧子曲
  • にじいろの魚/村野四郎詩 同上
  • 夕顔 /金子みすゞ詩 同上
  • すずしい日/岸田衿子詩 同上
  • かぜとかざぐるま/同上
  • サッカーに寄せて/谷川俊太郎詩 同上
  • 海ゆかば /万葉集大伴氏言立詩 信時潔
  • 一本の鉛筆 /松山善三詩 佐藤勝曲
  • アンコール
  • /三好達治詩 木下牧子曲

 

毎回、開催するその土地にちなんだ歌曲を歌ってくれる井澤さん。今回も福岡に由来する詩人で有名な北原白秋の歌曲をいくつかセレクトして下さいました。

みなさま北原白秋と聞いてなにかピンとくる詩や歌はありますか?

例えば小さな頃、よく口ずさんだ「♪あめあめふれふれ かあさんが~」も北原白秋。私で言うと祖母がよく子守唄に「ゆりかごの歌」を歌ってくれていたなと、昔を懐かしく思うきもちになります。でも、実のところそれらの詩が北原白秋のものであると、知らない方は多いのではないでしょうか?

正直なはなし、わたしもそのひとり。

ただ、井澤さんの会に参加した事で、祖母がこうして歌い継いでくれたことに改めて感謝することができたのは嬉しかったですし、私もきっと自分の子供や孫がいたら、そうだと知っていても知らなくてもこの歌を歌ってあげているだろうと思うと「詩やメロディーのもつ力の素晴らしさはどこにあるのだろう?」と改めて興味を惹かれます。

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以下、井澤さんが企画の紹介用に書いてくださったおはなしです。

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北原白秋は熊本生まれだが、まもなく福岡に転居した福岡に所縁のある詩人。数多い名作の中から、夏の会では山田耕筰とのタッグで作られた「待ちぼうけ」と「酸模(すかんぽ)の咲く頃」をお送りする。待ちぼうけは皆さんご存知かと思うが、すかんぽはあまり演奏されなくなりつつある曲だと思われる。そもそも、すかんぽという植物がすぐに思い浮かぶ人が少なくなっているのではないか。すかんぽが川べりに咲く風景。そこを子供達が歩いて学校に向かう風景。そんな日常を切り取った作品だ。

童謡や唱歌には、日本の風景、季節がふんだんに織り込まれている。それを歌い継ぐことにより、日本を継いでいくと言っても過言ではないと思うのだ。今は童謡を子供に聴かせる機会は壊滅状態のように思う。子供達に聴かせようと思ったら、まず子供を作る世代がその良さを理解していなければならない。クラシックと言っても、なんら難しいものではない。娯楽として成立するものだと確信している。

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ちなみにこの会では、積極的にお子様連れの方の入場を受け入れています。

クラシックのコンサートは、おもいっきり子供向けの内容か、完全に子供を排除したコンサートかこの2種類しかないのが現状で、それならばその真ん中の「いちばん学びたい、学ばなければならない人たち」が気兼ねなく参加できるコンサートがあってもいいんじゃないか。と、そんな井澤さんの想いが込められています。

夏の会4

夏の会5

解説もしっかりあって、決して子供向けの内容ではないのですが、でもこの会に参加する事で、それぞれの季節の歌をそれぞれひとつくらいは覚えて、子供に聴かせてあげたいと思ってくれる方が少しでも増えると嬉しいです。そして、子供が隣にいても真剣に聴いて、歌って、楽しんで、おもいっきり集中していってほしいと思います。

会の後半では、このイベントのテーマ曲として全季節で歌っている曲、クリスティナ・ロセッティの詩に木下牧子さんが曲を乗せた作品「風をみたひと」が印象的でした。

夏の会3

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風を見たひとがいるかしら

あなたもわたしも見ちゃいません

でも葉っぱが垂れてふるえていたら

風が吹きすぎているのです

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宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の終盤でちがう和訳ですが、このクリスティナ・ロセッティの詩が流れますから、ご存知のかたも多いのではないでしょうか?

風が沸き立つような前奏から始まり、メロディも風が疾走し、おさまり、また走るようなとてもきれいな曲で、目を閉じて想像すると詩の世界観や情景が目に浮かぶよう。詩の一遍一遍もすっと耳に入ります。

これは、木下牧子さんの作曲だからというのも大きいです。

日本語の発音に忠実に、余計な音を加えず、一文字一文字、大切に作曲されているので、詩がとても聴き取りやすく、木下牧子さんの作曲のものは、クラシック音楽初心者の私でも詩の世界観に楽しく、すっと入ることができました。

夏の会6

クラシック音楽のクラシック音楽たる所以、それは無駄な音がないこと。削ぎ落とされた音楽を指すのだと井澤さん。昔のクオリティで書こうと思っても、既に数多くの作品がつくられている中で、新しく「無駄のない音楽」をつくりだすことは困難。ただ木下牧子さんは、そのなかで「無駄のない音楽」をつくれる数少ない作曲家のひとりなのだそう。

前回のブログでも書きましたが、ほんとうにクラシック音楽は古くさくてわかりにくいものではなく、言葉の意味や想いをわかりやすく伝えるための表現方法・手段なのだと知る事ができ、とても身近に感じる事ができます。

次回は、秋がテーマ。個人的には井澤さんのCD「暖色」に収録された「秋刀魚の歌」に注目。佐藤春夫の詩なのですが、佐藤春夫が谷崎潤一郎の妻を好きになり、谷崎潤一郎が妻を譲ると約束したにもかかわらず、約束を守らなかったために、二人が絶縁した。と、いう何とも生々しい裏側があります。

「秋刀魚の歌」が書かれたのはまだ谷崎に妻を譲られる前、好きな女性が夫の元に戻ってしまった悲しい時期のもの。(この詩が発表されたことで結局谷崎は妻を譲り、めでたくハッピーエンド。)

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佐藤春夫自身が朗読したこの詩を聴いた事があるのですが、さっぱりとした清々しい読みっぷりとさみしい詩の内容のギャップが印象的でした。秋の会では、どのような解釈でメロディがつけられ、井澤さんが歌い上げるのかとても楽しみです。

今回参加くださった方も、参加できなかった方も、ぜひ一緒に日本語や詩のすばらしさ、おもしろさ、それを歌い継ぐ大切さをクラシック音楽をとおして井澤さんから学んでみませんか?

次回「秋の会 IN 福岡店」は11/28(月)開催です。

D&DEPARTMENT FUKUOKA ショップ店長 阿部 里奈