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「その土地らしさ」って何だろう

2016年7月25日 公開

「奈良号」取材の再開を前に「今週末、関西いる?」とD&DEPARTMENT OSAKAの野口店長(ぐっさん)からメッセージをもらって、奈良に行く前に急遽、大阪に寄って、D&DEPARTMENT OSAKAのイベント「わかりやすい世界のうた −夏の会・ドイツ編−」に参加してきました。

僕は1時間遅れの途中参加で、4階のドアを開けた時は、井澤さんが歌う第1部の終盤。「いたずらが過ぎて」――武満徹の『小さな空』を、井澤さんが歌っているところでした。驚いたのは、演奏中も会場のあちこちから、すすり泣くような音が聞こえてきた事。泣いてらっしゃる方が、一人や二人ではなく、何人も。位置が遠くて涙までは見えませんでしたが、たぶん、司会の野口店長(ぐっさん)も泣いていた、と思います。「D&DEPARTMENTのイベントで人が泣くんだ!」とこの時は思った僕でしたが、神戸大学の皆さんによる合唱「くちびるに歌を」では、堪えられないものがあり、結局自分も、泣いてしまったのでした。

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クラシックのうた(というよりは、いい「うた」の特徴なのかもしれないけれど)は、観客も一緒に歌ったり、そのリズムにあわせて身体が動いたり(いわゆるノッたり)は、あまりしないみたいです。むしろ、身体は固まってしまう。身体は動かないのに、心はガンガン揺さぶられる。「あ、井澤さん、それ以上はムリ」というポイントを過ぎると、泣いてしまうのです。なぜ自分が感動しているのかを理解するより先に、涙が流れてきます。

ただ、この「わかりやすいうた」の凄いところは、泣かされて終わらないところ。井澤さんは、解説(トーク、しゃべり)で、ガンガン笑わせてくれるのです。お客さんは、ホロリときて、ワハハと笑う。ああ、ここは大阪なんだ、と僕は思いました。うたをきいている間は、訪れた事が一度もない(そして、これから訪れる事もできないだろう)、海や山や都市や空や川などにいるような気持ちにさせてくれるのに、歌が終わって、井澤さんがマイクを取ってしゃべりだすと、「大阪に戻ってきた」という感じがするのです。そうやって「大阪に戻ってくる」事で、かえって、うたの中にあった、澄み切った清らかさ、音楽そのものが、心にポンと浮かんだまま、しばらくの間、残ってくれるような気が、僕にはしました。

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そんな経験をさせてもらって、あらためて思う事は、「その土地らしさ」とは、その土地に住む皆が、自然に心を動かせる、身にしみた環境や、環境づくりの事かもしれない、という事です。大阪では、涙と笑い、慣れ親しんだ「おもしろさ」があれば、それまでは「ややこしい」と思っていた物事も、「わかりやすく」、自然と心が動く。動くどころか、堪えられないほどに揺さぶられてしまう。D&DEPARTMENT OSAKAの「わかりやすい」とは、つまり、「大阪らしい」とイコールなんじゃないかな、と僕は思いました。

そんな事を、一夜明けて、大阪店のダイニングで野口店長(ぐっさん)とランチを食べながら「って事はつまり、他の県で同じプログラムをやっても同じように感動が伝わらないって事かもね」といって苦笑しています(あまり笑い事でもないけれど)が、確かにそうなのかも。その土地にはその土地の、心が通いやすい環境づくりがある。それが「その土地らしさ」、あるいは、いわゆる「ホーム」という事ではないでしょうか。

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素晴らしいものや美しいものは、たとえば「音楽」だけでも、この世界からこぼれ落ちるほど、有り余るほどにあるようです。だけれども、そんな有り余るほどの美しさや素晴らしさが、真っ直ぐに心まで届く場所や時間は、ほとんどないかのように思えてしまう。だから、僕たちは、素晴らしいものや美しいものを新しく作り出そうとするのではなく、それらが真っ直ぐに心まで届く場所や時間こそを、作り出していかなくちゃな、と大阪店のイベントに参加して、あらためて思いました。
では、どのような場所や時間のことを言うのか?それは、その土地によって違うのでしょう。その土地に住む皆が、もっとも自然に、なんだか笑えたり、なんだか悲しくなったり、言い換えると、心のやさしさが表に現れてくる場所や時間。素直に心が動かされてしまう、でも、動かされて何も嫌な気持ちではない、慣れ親しんだ状況や環境。それが「その土地らしい」という事であってほしいな、と思います。たとえばD&DEPARTMENT OSAKAが、そんな場所であってほしい。この世界からこぼれ落ちてしまうほどある、美しいものや素晴らしいことの「ホーム」であってほしい。

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そして、僕は今日から“奈良らしさ”を探さなくてはいけません。「d design travel 奈良号」取材の旅が始まります。できればD&DEPARTMENT OSAKAにも時々戻ってきて、「奈良ってこうだったよ」と伝えながら取材したいな、と思っています。とりあえずダイニング店長の安達さんに「天神祭に行かないと!」と言われているので、奈良への出発が、やや遅れそうですが(d design travel編集部 空閑理)

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