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食の語り部レポート⑦本みりんの美味しさのわけと活用法

2016年6月10日 公開

第14回 良い食品博覧会にてd47食堂内で開催された「食の語り部」講座のレポート。最終回の第7回目は岐阜県で「本みりん」をつくる白扇酒造の加藤孝明さんに、「本みりんの美味しさのわけと活用法」と題して、お話しいただきました。

 

◆日本の食文化を発展させた立役者「みりん」

冒頭、まず、加藤さんから参加者に質問が。「”みりん”がないと、この味がでないという料理は、何か思いつきますか?」

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白扇酒造の加藤孝明さん

この問いに、私は、すぐに料理が思いつきませんでした。みりんは、煮物のレシピ等でよく見かけるけれども、なくてもなんとかなる。料理があまり得意ではない私にとって、みりんのイメージは、申し訳ないのですが、そういうイメージでした。

しかし、加藤さんから教えて頂いた「”みりん”が欠かせない料理」は、日本の食文化の代表ともいえるものばかりでした。

まずは、うなぎのタレ。そして、そばつゆ。やきとりにも、天丼などの丼ものにも、みりんは欠かせない調味料だそう。甘みで言えば、砂糖もありますが、まろやかなで上品な甘みは、みりんではなくては出せない味です。

うなぎやそば等、私たちにとって身近な料理は、江戸時代に生まれました。江戸時代より前、食を含めた文化の中心は、上方でしたが、みりんをはじめとする新しい調味料の登場で、江戸の食文化が飛躍的に発展したそうです。そして、これらの食文化は、現代においても、みんなの大好物として受け継がれています。日本料理の味にはなくてはならない、重要な調味料が「みりん」なのです。

 

◆「みりん」とは何か?

そもそも、「みりん」とは何なのでしょうか。「本みりん」は、大まかに言うと、「もち米」と「米麹」、そして「焼酎」を混ぜ合わせて作ります。原料の約40%は焼酎なので、アルコール度数14度程度もある、れっきとした「お酒」です。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「“本”みりん」の作り方。スーパーにいくと、「本みりん」ではないけれども、「みりん」に似た商品がたくさん並んでいます。

例えば、パッケージに「みりん風」や「みりんタイプ」と書かれたもの。パッと見ただけでは、「本みりん」と何が違うのか、わかりません。

(配布資料より抜粋:「みりん」の定義)20160610_hakusen1

 

勉強会では、その違いを、実際に味わって確かめてみました。比較するのは、白扇酒造が作る「本みりん」と、スーパーで売られていた「みりんタイプの発酵調味料」です。

まず、「本みりん」の前に頂いたのが「柳陰」。これは、みりんの原型ともいえるお酒です。甘みが強いですが、香りも後味も、しっかりお酒の風味が感じられます。

次に飲み比べたのは、「本みりん」。熟成期間が1年・3年・10年と、3種の「本みりん」を持ってきて頂きました。

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上段左から1年熟成・10年熟成・柳陰。下段左から、3年熟成・梅みりん。熟成が長くなるほど、色が濃くなっていきます。

1年目のものは、甘みにまだ角があり、まだ若干アルコールが感じられます。3年ものになると、アルコール感がなくなり、甘さにもまろやかさが出てきます。10年は、色も濃く、こってりして蜜のような甘みに。

どの「本みりん」にも共通しているのは、そのまま飲んでも充分美味しいこと。砂糖は一切入っていないのに、しっかりと、しかもべたつきのないやわらかな甘さは、そのままカクテル感覚で飲みたくなります。(ちなみに、みりんで漬けた梅酒「梅みりん」は、一般的な梅酒のような甘ったるさがなく、爽やかですっきりとした甘みで、とても美味しい!お米が持つ甘みのすごさに驚きます。)

そして、いちばん最後に飲んだのが、スーパーで買ってきた「みりんタイプの発酵調味料」です。「本みりん」とは味わいは違うだろう、と予想はしていましたが、飲んでみてびっくり!甘みもありますが、塩気がかなりきいていて、「本みりん」とは全く違うものでした。

「みりんタイプ」と書かれていると、「本みりん」に似たもの、と思ってしまいますが、ここまで味が違うと、「本みりん」とは全く別の調味料です。「本みりん」を使うレシピで、「みりんタイプ」の調味料を使うと、本来の味付けと大きく変わってしまうでしょう。

甘みなら砂糖で良い。よくわらかないけれども”みりん”と書かれているなら安いもので良いか。そんな具合で、今までみりんのことをしっかり考えてこなかったのですが、そうすることで本来の料理の美味しさから、ずいぶん離れた味付けをしてたのではないか。本来の「みりん」の味を知り、気づかされました。

 

◆長い歴史を受け継ぐ、私たちの日常の食文化

加藤さんのお話は、みりんから広がり、日本の食文化の歴史、そして人々の思いまで広がっていきます。

例えば、室町時代の宮廷料理の話。この時代は、メインのお料理は味付けせず、塩や酢などの調味料を銘々に用意し、自分の好みの味付けで食べていたんだそう。今とは違う、ずいぶん変わった食べ方だと思いましたが、この文化の流れは、今でもお刺身の食べ方に受け継がれています。

他にも、古来より「蛇」には、身を守る力があるとされ、食文化にも、蛇の象徴がよく取り入れているというお話も。例えば、お正月におなじみの「鏡餅」は、蛇がとぐろを巻いている姿を模していて、新しい年に、自分たちも新しい自分に生まれ変わるように、そんな思いが込められているのだそうです。

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熱心にメモをとる参加者の皆さん

現代の私たちの食生活には、新しい食材やメニュー、食べ方であふれていて、古くからの習わしや文化は薄れているように感じます。そんな食生活の中で、何気なく料理を食べていても、私たちは、自然と、過去の文化の積み重ねの上で生活しているのだ、ということが、加藤さんのお話を通じて実感されました。ならば、今の私たちの食生活は、たとえ意識していなくても、未来の人達の食文化の土台になるのでしょう。毎日の、個人的な食事が、実は昔の人・未来の人とのつながりの中にあるのだ、と思うと、毎日食べるものの作り方・選び方の意識が変わってくるように思います。やはり、未来に伝えていくのなら、本当に美味しいもの、本当の料理の味を、私も伝えていけるようになりたい。 まずは、「本みりん」を使って、本来の料理の味を確かめる事から、自分の食生活を変えていきたいと思います。


d47 design travel store 進藤

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