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平飼い有精卵 タナカファーム

2016年3月15日 公開

100円のジュース、100円のアイスと聞いたら高いと思う方は、まず居ないと思います。100円の卵、1個が100円と聞いたら、本当に?と思うくらいの金額ですね。大阪と奈良の県境、河南町にあるタナカファームさん。30年以上養鶏を営んでらっしゃいます。そこで飼っている鶏の卵は、1個108円で販売されています。

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私自身、飲食店で料理や飲み物を販売しているので、モノの相場というものを気にします。ビールだったら、500円から1000円くらいだろう。パスタだったら、1000円台くらい、も少し高くて2000円までかな。と言う具合に。贅沢な空間で、高価なお皿に盛られて、一流の食材を使って、と言うように、高いものにはその周りにも高くなるべく工夫があります。

卵1個が100円と言うのは、ちょっと普通ではありません。何も知らずに買ってみようかな?という価格ではない。その理由を知る為に、河南町の田中ファームを訪ねて来ました。

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富田林市の東、もう少し行けば奈良にという少し手前、河南町に向かう鉄道は無く、車で訪問させて頂きました。
大阪は意外と自然も多い。その中でもここは、特別自然が多く、はっきりいってかなり田舎である。目的地に進むにつれ、道は林の中に入って行き、ナビが無ければ行けないような場所。市内からは約1時間。それほど遠くない場所に豊かな自然が残っている。

到着すると、田中成久さんが出迎えてくれた。

田中さん

早速、畑を案内してくれるとの事。
畑?養鶏場じゃないのか?などと不審がる我々を気にもせず車へ乗り込み、5分ほどの距離にある畑へと向かう。

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梅の木が3本、雨の中花をつけていて、あたりは霧に包まれ、ちょっと夢の中の様な場所。しかもなんだか良い香り。

山の蒸気、土の匂い、花の香り、そして何か香ばしい香り。あたり一面に生い茂る青草は、鶏に与える牧草だそう。鶏が牧草を食べるというイメージが全くなかったので驚いた。畑の脇には小屋と呼ぶには大きい、屋根の付いた納屋のような場所がある。そこに、積み上げられた土のようなもの、鶏舎から出た鶏糞を発酵させている。
この発酵させた鶏糞を肥料にして、鶏の餌となる牧草を無農薬で栽培。納屋の中で発酵をさせた後、畑(というか原っぱ)に肥料として撒き、成長したら刈り取り鶏にあげる。当たり前の事のようだけれど、結構な手間がかかる。鶏舎までも車で10分ほどはかかるし、刈り取りや施肥を考えるとなかなかの重労働であろう。田中さんは自分でまかなう事で安全を追求する事を選択したのです。

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その後、案内していただいた鶏舎には鶏がたくさん。見学に行ったメンバーは皆「かっこいい!」「かわいい!」と、大はしゃぎ。
想像よりも大規模で、1,000羽以上の鶏を飼育されている。しかも増築中。100円の卵。結構需要があるのだと驚かされる。
田中ファームでは平飼い有精卵を販売している。「平飼い」「有精卵」このキーワードで具体的にどうんな風に作られているのかすぐにピンと来る方は多くないだろう。普通の養鶏場がどんな風に飼育されているか知る機会はあまりない。ためしに、「養鶏場」で画像検索をしてみて欲しい。ケージと呼ばれるカゴに鶏が何段も入っているのが普通の養鶏の風景。
一方、平飼いとは、平らな地面で放し飼いにする事。「1平方メートルあたり5羽以下で飼育」が平飼いの基準として鶏卵公正取引協議会の規則とされる。
問題は、広さが必要な事。卵を集める手間がかかる事。管理を考えると、平飼いは大変そう。メリットは、広いところで適度に運動もするため、ストレスもなく健康な鶏に育つ。
一方、ケージでの飼育では、鶏は病気にかかりやすいので抗生物質などを飼料に混ぜて、病気を予防。狭いから、鶏も生活するのはなかなか大変だろう。

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卵を温めるとヒヨコがかえる。そう思いますよね?
実は、そんなことはありません。
鶏は、受精をしなくても卵を産むのです。だから普通の卵は温めたところでヒヨコはかえりません。有精卵(受精卵)とわざわざ表記するのはここに理由があります。一般的に採卵の養鶏ではオスは飼いません。卵を産まないオスの特技は朝に鳴く「コケコッコー」くらいで、他にはあまり役に立たない(養鶏ではね)そうです。種としてのオス、、自分もオスだけに、やや同情しました。ちなみに、「コケコッコー」と鳴くのはオスだけ。メスは「コッコッコッコ」としか鳴きません。

田中さんの鶏舎には、ひとつの小屋に必ずオスを数匹同時に飼育している。100羽のメスに対して、6羽のオス。これ以上多いと、オス同士が争ったり、小屋の中での社会形成がうまく行かないそうです。

やっぱり有精卵の方が栄養が高い?その疑問を田中さんにぶつけたところ、成分的には変わらないそうです。けれど、やっぱり生きている卵(有精卵)の方が自然じゃないか?という理由でオスを飼育しているそうです。
田中さんは餌代もかかるけれど、自然である事を選択したわけです。

鶏舎には、いろんな工夫がされていました。鶏の本能を利用して、一カ所で卵を産むように工夫をしたり、地面には、籾殻と牧草を敷き詰め、自然に近い環境で鶏を飼育しています。鶏達は、そんな環境で餌を食べたり、集まって眠ったり、走り回ったり、のびのびと暮らしていました。

鶏舎を後にし、倉庫を見学させてもらう。
倉庫?そもそも倉庫を見学と言うのもおかしな話だな、なんて不審がる我々のことは当然気にもせず、どんどん案内してくれる。

広大な倉庫には、米や小麦や、魚粉、わかめ、おからなどなど。これ、全部鶏の餌。しかも、全部が有機栽培とか、◯◯さんのとか、出所まではっきり分かるものばかり。その都度、食べさせてくれる。最初は何気なく聞いていたけれど、途中からは何が出て来るのかワクワクさせられる。

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田中さん(以下田)「これは、京都のオーガニックの豆腐屋さんのおから、食べてみ?」美味しい!

田「これは鳴門のわかめ、いつも卵と物物交換してるんやでー」うーん。普通のカットわかめなんかよりよっぽどうまい。

田「これは、醤油醪(もろみ)。醤油醪を絞ったものを乳酸発酵させたもの」良い調味料になる。粉醤油みたい。

田「これはカシスを粉にしたもの」え!?カシス?んー、確かに。

田「これは、、、」続く。

延々に続く。なんとも、贅沢な鶏。へたすると、人間よりもええもん食べてるな。他にも、北海道産の魚粉とか、貝殻とか。自家配合で18~19種をブレンドするのだそう。昔は、もっと少なかったそうだが、栄養を考えるとどんどん増えて行ったそう。そして、このたくさんの種類の餌をたっぷりとストックしてある。
無くなれば、足せば良いと思うのだけれど、普通飼料は常温の倉庫で保存される為に、保存料などを添加する。ところが田中さんは、冷蔵倉庫に冷凍室までしつらえて、全国から直接買い付けてきた飼料を保管している。保存の為の添加物を防ぐため、自分で管理しているのだ。この冷蔵倉庫を作るのに、結構な高級外車が買えるくらいの設備投資をされたそうだ。他にも、クレーンやら撹拌器やらおおよそ養鶏場には似つかわしく無い大型の重機であふれている。田中さんは、これらを使って安全である事をとことん追求しているのである。

そして、田中ファームは養鶏場特有の匂いがほとんど無い。
自然な飼料を栄養バランスを考えながら与えると、鶏の糞はほとんど匂いがしない。鼻先まで近づけてようやくにおう程度。
だから、見学中に悪臭に苦しめられる事は全くなかった。

ここまでくれば、1個の価格が適正かどうかに疑問を持っていた事さえ忘れてしまう。田中さんは、100円の卵を作ろうとしたのではなく、どこまでも正直な卵を目指した結果、販売価格が高くなってしまったのだと理解できた。最初にいくらくらいで売ろうなんて考えていたら、ここまで徹底する事は出来なかったであろう。卵を産む鶏を育てる事にまつわる、色んな事で常に正直でベストを選択し続けてきた結果、この「黄味の鶏子」は生まれた。

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この卵を割ってみると、黄身はレモンイエロー。赤みが強い卵が、味が濃くて美味しい。そして高級だと、そう思われている。あの赤みはどこから来るのか。そう、餌からです。トウモロコシやカロチンの豊富な餌を与えると、黄身の色は濃くなる。赤に近いオレンジのものもある。けれど、卵の黄身と言うように、本来は黄色いものなのである。確かめてはいないけれど、こんな小細工をするのは日本だけだそうだ。なんとも、残念な話だと思った。

もともと、卵は高級食材だった。統計では1950年頃、日本の鶏卵は400gで99円。今の価値にすると2370円。卵が1個60gだとして、1個約340円。その後、養鶏の技術進歩と効率化により1パック10個入りが200円程度で買えるようになった。
高いものには、理由がある。
安いものにも、理由がある。
有精、無精に関わらず、10日で8個産めば良いとされる。1個340円の時代、今ほど卵が作られていなかった事は想像に難しくはない。その価格が1/17になった今、当時とは比べ物にならない数の卵が消費されている。膨大な数の鶏が飼育されている事だろう。

田中さんの卵を購入される方は、ほとんどがリピーター。アレルギーを持った方が購入される事も珍しくないらしい。人間が食べても美味しいと感じる餌だけで育った鶏。よくよく考えたら、生き物なんだから、自分が美味しいと思ったものを食べる事は、特別な事ではなく、自然なことだ。人間が食べられない餌?で育っているのかは分からないけれど、イメージでは家畜の餌を人が食べられるとは、普通は思っていない気がする。そこが、そもそもずれてきているのだなぁと実感した。

冒頭の、1本100円のジュースを我慢して、たまには自然な卵を食べてみる贅沢を味わってみるのも悪くないと思う。100円でずいぶんな贅沢をした気持ちになれる事だろう。

D&DEPARTMENT DINING OSAKA
安達 秀人


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