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大下香仙工房 5代目 大下香征

2016年2月17日 公開

d47 design travel store で紹介している「蒔絵(まきえ)アクセサリー」をつくる石川県 大下香仙工房。五代目の香征(こうせい)さんは奈良時代から続く装飾技術である「蒔絵」「螺鈿(らでん)」を駆使し、現代の生活に添うアクセサリーを作り続けています。その職人技術をわたしたちにも体験させてくれるべく、ワークショップを開催しています。

今回は五回目。「蒔絵」「螺鈿」の好きな方を体験し、ペンダントヘッドやピンブローチを作りました。

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体験といっても、「蒔絵」「螺鈿」の制作は一日で終わりません。金粉や装飾貝を付けるために漆を用いるので、その漆が乾き硬化するのに一昼夜かかります。ワークショップでは最初の工程である金粉を蒔く、装飾貝を貼り付けるところまでを行います。

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直径20mmほどの小さな土台の貝に、装飾を施す工程は思ったよりも繊細な作業。参加者みなさん、息を止めながらの集中した時間の中、手を動かしていきます。

蒔絵では、まず紙に描かれた下絵の線を漆でなぞり描いていきます。下絵をなぞった紙を地貝に押しあて漆を転写し、さらにその転写された線を頼りに漆を塗っていきます。

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この時使用するのは毛先が針の細さのような、極細の筆。普段の生活の中で筆を使うことがほとんど無い今、思うように極細の筆を走らせるのはなかなか難しい作業。また漆も粘度が高いので、筆先がうねります。

下絵をなぞる

螺鈿では、地貝に鉛筆で直接下絵を描き、その上から漆を載せ装飾貝を接着していきます。螺鈿の場合、漆は接着剤の代わりとなり装飾貝を定着させますが、この分量も筆で「ちょうど」を運ぶのが難しい。加えて、装飾貝はとても小さな板状のパーツ。裏表も気にしながらの作業は呼吸を忘れそうになります。

螺鈿

緊張の2時間。この後の磨きの工程は香征さんの工房にお任せし、完成となります。

 

もともと、石川県山中地方で広くお茶道具や器に装飾として施されてきた蒔絵や螺鈿の技術。
山中漆器作りでは木地、塗り、蒔絵の工程があり、それぞれ職人がその工程の技術に特化し腕を磨いてきました。
大下香仙工房の初代・雪香(せっこう)も金沢で習得した蒔絵の装飾技術を故郷・山中で広めるべく1894年に工房を創設。以来、代々に渡り茶器などに蒔絵を施し伝えてきました。しかしお茶道具の需要自体が減少、また山中漆器もシンプルなものを好まれるようになってきた時代の流れがあり、蒔絵を施さず、漆を塗らず、木地で完成する品も多くなってきています。

ワークショップ時に香征さんが見せてくださった茶器は先代が制作したもので家宝として引き継いでいるもの。華やかな絵柄にまばゆいばかりの大小異なる金粉が蒔いてあり、さらに蒔絵を何層にも重ね、磨き込まれた柄は奥行きがあります。

茶筒2

簡潔でシンプルなものが主流の昨今、ここまでの装飾を施すことは少なくなったそう。そもそも、山中漆器の需要の減少とともに作り手も減っていき、価格の上がる要因のひとつである装飾は一番始めに排除されてしまうもの。香征さんは茶道具だけを制作し続けることでは、加賀蒔絵が衰退してしまうと思い、五代目になった時、「装飾」だけで成り立つものをという考えからアクセサリーの制作を始め、今に至ります。

きらびやかな茶器からは一転変わり、落ち着いた艶が美しいピアス。
技術は変わりませんが、表現が変わり、今の私たちに合う形で「技」が引き継がれていきます。伝統技術も変化があるからこそ、先を見続けれるんだと香征さんは気づかせてくれます。
d47 design travel storeでは、「拭き漆」の山中漆器を扱っています。一方で香征さんのアクセサリーもあり、それぞれを単体で知った私にとってははるか昔からその二つの技術はひとつの流れの中にあり、現代の需要や事情、はやり廃りによって、漆器と蒔絵が各々の道を生き始めたんだということに、職人たちの誇りや背負っているものを感じずにはいられませんでした。

店内様子
香征さんが思うことは、伝統技術を身につけている人が増えてほしいというのはもちろん、もっとその土地を丸ごと体験してもらいたい、ということ。体験こそがその土地のこと、続く伝統、その土地らしさを知ることに繋がるのでは、と話します。
いつか加賀の工房にお客さまを招いて蒔絵・螺鈿の技術を体験し、その技術が根付いた加賀という土地を知るためにも観光もしてほしいと夢を膨らませています。

前回作品
進化する伝統技術、加賀の土地で変化を受け入れながら長くつづく大下香仙工房のアクセサリー。ワークショップの体験は、その職人たちが時代に合わせて紡いできた技術を垣間みれた時間でした。

d47 design travel store 薗部 暁子