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ホテルオークラ東京

  1. 芸術品と言えるホテル。 日本を訪れる外国人が急増していた昭和37年に開業。不世出の芸術家が結集して“最高”を目指し、創造した空間。
  2. 徹底したメンテナンス。 日本庭園、伝統技術を生かした装飾品など、あらゆる物を長く大切に使う意識の濃やかさ。

1万8000坪の芸術 菱文様をあしらった外観は、まるで城だ。周辺には各国大使館が犇めいて、夜になると、とても静か。軒回りに鱗文様が照明に輝いて、菱文様が影絵のように浮かび上がる。東京オリンピックを二年後に控えた1962年、海外からの賓客や観光客が大勢訪れることを想定して、日本独自のホスピタリティ、そして、和の伝統美を持つホテルとして開業。派手に主張ばかりせず、フロントは通路奥に控えさせ、代わりにロビーに大きな水盤を置き、生け花を飾る。植物は単なる観賞物ではなく、空間を生き生きと彩る。デザインも同じだ。オークラの隅々にまで施されたデザイン――麻の葉文様の木組の格子、屏風のような装飾壁、そこに射す白く柔らかい光、切子玉形を連ねた照明――そのすべてに「日本の美で世界をもてなす」という創業者の精神が生きている。設計を手がけたのは谷口吉郎を長とした設計委員会。棟方志功、富本憲吉ら民藝運動を代表する当時最高のクリエイターたちも尽力したこの空間を、「1万8000坪の芸術」と呼ぶ人もいる。メインロビーに並ぶ漆塗の円卓を囲む五脚の椅子は、上から見下ろすと梅の花弁のように見える。漆は職人が幾度も塗り直している。長く大切に使う、その心もまた〝日本の美意識〟だ。かつて「国際化」という新時代の到来を東京に宣言した、高度成長期前のデザインプロジェクトが、現在まで生き続けている熱を感じてほしい。(空閑理)

※掲載情報は、『d design travel TOKYO』制作時点(2012年8月)のものとなります。