D&Department

D&DEPARTMENT ネットショップへ

R0077635

山の上ホテル

  1. 昭和の初めの、ヴォーリズ建築に泊まれる。 アメリカ人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの代表作の一つ。美しいホテル。
  2. 三島由紀夫、池波正太郎も定宿としていた。 世界屈指の“本の街”神田神保町にも、すぐ。川端康成、井上靖、檀一雄、松本清張、吉行淳之介、小林秀雄たちに愛された。
  3. チェックインしたら、まずは、ほうじ茶。日本旅館のホスピタリティーもある。 「『株式会社山の上ホテル』というよりは、『吉田商店』」と、支配人。創業者・吉田俊男が築いたホテルの在り方を愛するスタッフが働く。

カンヅメになりたいホテル 神田駿河台の丘に建ち、周辺に出版社が多かったことから、小説家たちが定宿にした「山の上ホテル」。ロビーはカフェとして利用でき、〝お客様〟というより〝ご近所さん〟の憩いの場。肩肘張らないリラックスした雰囲気だ。2013年に60周年を迎える老舗だが、室温は適切、空調の音もタバコの臭いもなく居心地は抜群だ。クラシカルなタイル装飾や絨毯、日英併記のタイポグラフィ、椅子やテーブルなど、どれも素敵。トイレの壁に備え付けの灰皿が耳のような形で美しかった。色もいい。ぐっすり眠って目覚めた時、部屋の静かさにすっかり融け込んで、自分が〝山の上の一部〟になっていることに気づく。格別な朝だ。ヴォーリズが設計した建物は、竣工は1937(昭和12)年。造形は美しく、眺望もいい。太平洋戦争時は日本海軍に、戦後は米軍に接収された後、1953年に実業家の故吉田俊男が受け継いで、翌年ホテルを開業。愛称だった「HILLTOP(丘の上)」を、風情を込めて「山の上」と訳した。部屋に通されて、すぐにほうじ茶が運ばれてきたり、雪の日は従業員泊まり込みで一晩中周辺の坂道の雪かきをしたり、旅館が持つ〝もてなしの心〟を大切にするホテル。そんなホスピタリティーを「旅テル」と冗談まじりに表現した粋な創業者の想いを、本館・別館合わせて全74室の隅々まで、脈々と受け継ぐその有り様に、文化人も旅人たちも惚れ込むホテル。(空閑理)

※掲載情報は、『d design travel TOKYO』制作時点(2012年8月)のものとなります。