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どん底

  1. プロ・アマ問わず、集まってくる東京の芸術酒場。 空前の経済成長前の、夢を抱く者達がひしめく新宿に昭和26年開店。芸術家、芸術を志す人々に影響を与えた街の顔。
  2. 劇団舞台そのままの、活気と熱気がある空間と接客。 店名は「良心」と「ロマン」の作家ゴーリキーの戯曲に由来。建築は大陸酒場風デザイン。薄暗く渾沌としていて、人間味を感じる店。
  3. 「林さんのライス」「ドンカク(どん底カクテル)」。 それらが常連客のリクエストで生まれたエピソードは面白く、食べると想像をはるかに超える美味さ。「ドンカク」は焼酎をレモン果汁や炭酸水と割ったオリジナル。

芸術家たちに愛される〝新宿的〟酒場 「何んとも言えぬハリ切った健康な享楽場である」――新宿3丁目の外壁を蔦が覆う「どん底」を、三島由紀夫はこう評した。店を新装した1955年から、店内の様子は、ほぼ同じ。天井は低く、隣席との間隔は狭く、薄暗い照明は電球に空き瓶をかぶせた手製のランプ。埃だらけのキープボトル、年代物のアンプとスピーカー、そしてジャズ。きしむ階段を上り下りする地下1階から地上3階まで、全階にカウンターがある。基本的に同じ店員が中に立つから、顔を覚えて、同じ階に通ううちに、芯からくつろげる自分の居場所になっていく。店員は一見寡黙に見えるけれど、皆話好きだ。「ここは、働くスタッフもお客さんも、叶えたい夢を持っている人間が集まってくるから、お互い刺激や出会いがあるし、だから安心もできる」と三代目の現店長。毎晩盛況のバーが4軒も入居しているような状況なのに、焼き野菜も肉の煮込みもミックスピザも、数々の名物料理は小さな厨房1つで全部作る。そうしないとできない手作りの味、やみつきの味だ。そんな、ちょっと無茶な人間らしさが、雰囲気と渾然一体となって、都心で真夜中まで開いている隠れ家として、人々を引き寄せる。雰囲気が濃すぎて、最初は少し入りづらいだろうが、一度知り合えばすっかり気を許すのも新宿らしさ。どん底は、ハッタリも建前も要らない、客達の等身大のつぶやきが耳に心地よい、〝天井桟敷〟な酒場だ。(空閑理)

※掲載情報は、『d design travel TOKYO』制作時点(2012年8月)のものとなります。