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珈琲美美

マスターの森光宗男さんは、2016年12月7日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。

  1. 古い建材などを、モダンとミックスさせた空間。店主・森光宗男さんが修業した名店・東京吉祥寺「もか」(閉店)から譲り受けた椅子やショウケース、焙煎機も生き生きと使われている。
  2. ダルマ形のシュガーポット、メニューなど、隅々まで行き渡る、濃やかなデザイン。壁には、黒いアゲハ蝶を描いた、故・熊谷守一の小さな額絵。使われる木彫りの盆は、味わいが増したツヤのある飴色。
  3. 自家焙煎、ネルドリップ、頑固一徹、福岡の珈琲文化を牽引する。
    ネルドリッパーは、銅製の柄部分は常連客の金物師が制作、布部分は奥さんが手縫いで、1つ1つ手作りして、店頭で販売。

「ダルマサン ハ コロンダ」としても必ず立ち上がる、“優しい珈琲の鬼” 「珈琲美美」は、照明を落とした1階が焙煎室と豆の販売所。床と壁は東京駒場の「日本民藝館」と同じ、温かみのある質感の大谷石だ。訪れたのは3月末で、自然光が明るい2階喫茶室の窓は開け放たれ、すぐ裏の福岡城址の木々の向こうに、多聞櫓の満開の桜の花びら、そして黄色い蝶が陽光を受けて舞っている。チェンバロの独奏曲が低く流れる店内に、テーブルが6卓と、分厚い一枚板のカウンター。そこに、黒い上着に黒い丸帽子姿の店主・森光さんが立つ。31年間、店を構えていた天神から、2009年に現地に移転した、比較的新しい店だが、梁や柱、床の木煉瓦など、たっぷり焙煎の煙が染み込んでいて、移転前の黒っぽく古びた店の建材を巧みに合わせてある。ダルマをデザイン化した、「美美」のシンボルマークの意味を尋ねると、「ダルマは、転んでも自分で元に立ち直るでしょう。“そんな自分に戻りたい人”が、うちに来て、珈琲を飲む--そんな店でなければ」と森光さん。二つ折りの伝票には、「ダルマサンガコロンダ すきに世の中も変わっとる ゆっくり珈琲ば飲んで 元気に起き上がってみんしゃい」と書かれてある。森光さんがネルドリップで淹れた「中味ブレンド」をしみじみ味わいながら、伝票を裏返すと、「01900」とナンバリングがあり、これは今年訪れた客の数だ。押しも押されもせぬ名店に来たことを実感し、僕は嬉しくなった。(空閑理)

本文の内容は、『d design travel FUKUOKA』掲載時(2014年)のものです。