2010年6月30日 16:19更新
VITSOEの英国社長であるマークとナガオカの対談の中で、彼がインスパイアされた人物として、ダーウィンがあがった。生態系の自然変化のように、必要性を受け入れて自然のように徐々に変化し、成長していく。それは、VITSOEのそれぞれのパーツが精度を上げていっていることに現れると語った。しかし、それ以外のビジネスとしての姿勢もまた同様の進化を遂げていることは明白だ。なぜなら、商品だけを良くするだけでは、継続できる形とはならないから。マークは、商品はもちろん、製造工程、取引先とのパートナーシップ、スタッフ育成、ショップの考え方、梱包、リユースの思想、顧客とのコミュニケーションのあり方など、あらゆる局面で、一貫した、その自然のような進化を遂げていく哲学のもと、VITSOEをビジネスとして継続できる形に育て上げてきた。
世の中には、とても素晴らしいとされた商品も、大きな需要という波に左右され、廃盤になったり、さらには、そもそも持っていた会社の風土や気質も根こそぎ失われてしまう、といったことは少なくない。変容した企業の姿は、プロダクトに反映され、あてどなく消費の渦に巻き込まれていくのだ。僕たちも、ロングライフな商品だけを扱っているからこそ、「こんなに素晴らしい物なのに」と思いながら、廃盤を受け入れざるをえない状況がある。そんなことを山のように経験してきたからこそ、VITSOEの姿勢に、多くの共感を得た。
およそ50年前に、ディーターラムスがデザインしたシェルフ。まさしくロングライフデザインを代表するこのシェルフを、名のごとくロングライフにしていくには、マークのような存在で、その商品を取り巻く環境全体をデザインしていく存在が不可欠だ。そして、日本の中で、僕たちが、その役目を果たそうと考えている。
ディーターの思想や、VITSOEの思想が、これからのデザインや生活のあり方に、ひとつのメスとして批評するような立場として、作り手のあるべき姿として、日本の中でも今後注目すべき存在となっていくことは間違いないだろう。VITSOEを担当する長谷川にとってはもちろん、私を含む、VITSOEに関わる全ての者にとって、ただのビジネスではない使命があることがベースにあるかどうかは、とても重要であると感じた時間となった。
マークの次回の来日は未定だ。しかし、今回のような濃密な時間を、これからも持っていきたい。
相馬 夕輝